趣味の漢詩と日本文学

2007/06/14(木)19:11

428 餞王相公出牧括州 劉長卿

漢詩・漢文(471)

餞王相公出牧括州 劉長卿 縉雲▼(「言」のみぎに「巨」。キョ)比長沙遠、出牧猶承明主恩。 城對寒山開畫戟、路飛秋葉轉朱■(「車」のみぎに「番」。ハン)。 江潮●(「水」を「品」のように三つ書く字。ビョウ)●(ビョウ)連天望、旌旆悠悠上嶺翻。 蕭索庭槐空閉閤、舊人誰到▲(「羽」のしたに「隹」。テキ)公門。 【韻】遠・恩・■(ハン)・翻・門() 【訓読文】 王相公の出でて括州に牧するに餞(はなむけ)す。 縉雲▼(なんぞ)長沙に比して遠き、出でて牧するは猶ほ明主の恩を承く。 城は寒山に対して画戟を開き、路は秋葉を飛ばして朱■を転ず。 江潮●●として天に連なつて望み、旌旆悠悠として嶺に上ぼつて翻へる。 蕭索たる庭槐空しく閤を閉ぢ、旧人誰か到らん▲(テキ)公の門。 【注】 ○王相公 王縉。字は夏卿。太原の人。王維の弟。広徳二年に宰相となった。元載に連座して、括州の刺史に左遷された。 ○出牧 中央の朝廷から出て、地方の長官となる。 ○括州 江南道の州の名。いまの浙江省麗水県。 ○縉雲 括州。 ○朱■ 太守の乗る車の両側からそり出した覆い。 ○庭槐 周代には、三公の位にあるものは、朝廷の庭に植えられた三本のエンジュの木にむかってすわった。 ○閉閤 漢の宰相公孫弘が東閤を開いて賢人を招いた故事をふまえる。 ○▲(「羽」のしたに「隹」。テキ)公門 前漢の▲(テキ)公。廷尉となったとき、大勢の訪問客がいたが、地位を失うと、門前に雀をとるかすみあみを張れるほど来客が減った故事。 【訳】 相公の王縉が括州の刺史として赴任するのにたむけた詩。 きみの行かれる縉雲は長沙にくらべなお遠い、朝廷出でて刺史となる、それとて天子のご恩なり。 画戟を開く城門のむこうに寒山そびえたち、道に散りしく落ち葉をば、きみの乗る馬車けちらかす。 川の満ち広々と天に連なりどこまでも、きみの一行はるばると旗なびかせる山の嶺。 ものさびしげなエンジュの木、賢人招く人もなく、付き合いあった人も減り、きみを訪ねる者もなし。

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