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がらくた小説館

リフォーム詐欺

うちの家はかなり古い。祖父の先代のもっと前からというのだから、門構えを見ても由緒正しき家柄だったことが分かる。
だが、それに伴う老朽化は激しいものだった。

そこで堪りかねた俺は「長男である俺がこの家を継ぐのだから」という理由で祖父をなんとか説得して、家を少しばかりリフォームすることにした。

 どこのリフォーム会社が良いのかと悩みぬいた結果、あるリフォーム会社を選択した。最近リフォーム詐欺による事件が多いことは知っている。それだけに業者選びには細心の注意をはらったつもりだった。

しかし…。
時すでに遅し。
何度電話を掛けてもつながらない…。それどころか今朝電話を掛けたところ「この電話は、現在使われておりません…」の冷たい女性の声が流れるだけ。

退路を立たれた俺は、藁をも掴む思いで法律事務所に電話をすることにした。
「すいません。リフォーム詐欺にあったのですが」

「あ~、最近よくあるんですよ。もう少し詳しくお話ください」

「リフォーム会社と連絡が取れないんですよ」

「どれほどの代金の損失ですか?」

「かなり大がかりなリフォームをしたので…」

「相当な額なのですね」

「はい」

「お金だけ騙し取られて逃げられたわけですね」

「いえ、お金は払ってません」

「えっ?それではリフォームは?」

「はい。リフォームは完全に終了しています」

「では、問題は無いのでは?」

「いえ、リフォームを頼んで仕事をしときながら、代金も請求せずに飛ぶなんてこれは詐欺以外の何ものではないですよ」

「あの…」

「はい?」

「こちらも忙しいので、電話を切らせてもらいます」

「なんですって?じゃーもういいです。それで相談費はいくらですか?」

「いや、お金はいいですので、それじゃ」

「なんだって?あんた相談受けときながらお金を請求しないなんて、あんたも詐欺師なんだな」









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