ドラマ「坂の上の雲」第13回「日本海海戦」
ドラマ「坂の上の雲」で一番見たかったのが、日本海海戦のシーンで、 これまで、この海戦シーンは「円谷プロ」でしか見たことが無かったので、 それに比べれば、当然のことかもしれませんが、とても良く出来ていると思いました。 ロシアの戦艦が沈没するシーンは、不謹慎な言い方なのでしょうけど、 絵画のように美しかったです。 ただ、日本海海戦の最も重要なシーンである「敵前回頭」は、 波濤の処理がしょぼく、三笠がおもちゃのように見えたのは残念でした。 以下は、原作にはないオリジナルのシーンの感想です。 海戦が終了し、戦艦「三笠」の病室で、 加藤友三郎参謀長が東郷平八郎長官に「だいぶ怪我人を出してしまいました」と言って、 東郷が加藤を見ながら「もっと怪我人が出ると思っていた」と返答し、 秋山真之参謀と眼が合うというシーンがありました。 真之は、多分「三笠」の惨状を見て驚愕し、深く沈みこんでいたのだと思います。 それで、東郷は「お前のおかげで怪我人を多く出さずにすんだ」と真之を慰労しているわけで、 慰労の仕方が回りくどいと言えば回りくどいのですが、 東郷らしいというか、渡さんらしいという気がして、 このシーンはオリジナルの中では珍しく良かったのではないでしょうか。 そういえば、敵弾が三笠を直撃した時の、渡さんのシーンはしびれるぐらいにカッコ良かったです。 戦争が終わって、児玉源太郎満州軍総参謀長が、乃木希典第3軍司令官に、 「これからどうなるのかのう」と聞いて、乃木が「何も変わらん」と答えるシーンがありました。 「明治」が終わると同時に死を選ぶという乃木の将来を暗示しようとしたのかもしれません。 それから、兄好古が弟真之に「これからどうなるのかのう」と聞いて、 真之は「急がんとひと雨来る」と答えるシーンがありました。 「ひと雨」とは何を暗示しているのでしょう。 それから、「急ぐ」とは何を急ぐ必要があるというのでしょうか。 まさか、「アメリカとの戦争に備えよ」と言ってるわけではないでしょうから、 何か気になるシーンではありました。 この3年間におよぶ長いドラマのラストは、 これまでおざなりに扱われてきた「好古」の臨終シーンでした。 これは、多分、阿部さんというより松さんに配慮したのかもしれません。 しかし、「あなた、馬から落ちてはいけませんよ。」では、泣くに泣けないのです。 たぶんというか、まちがいなく、これから逝こうとする夫に対して、 妻が「馬から落ちるな」という発想をするわけがありません。 これは、やっぱり、「貴様と俺とは同期の桜」であって、 もう70歳を過ぎた陸軍仕官学校同期の爺さんが見舞いにやって来て 「あきやまあー、うまからおちるなあー」 と叫んでくれないと、さまにならないわけです。 このラストシーンの「がっかり感」みたいなものが、ドラマ全体を支配していたような気がします。