東郷平八郎の幕僚、加藤友三郎
下村寅太郎著「東郷平八郎」のことを書きはじめて、はや9日目になります。 第3章「幕僚」のところでは、参考図書として、「元帥島村速雄伝」と「元帥加藤友三郎伝」と「秋山真之」が引用されていますが、「秋山真之」以外は、入手は非常に困難と言えます。 しかし、「元帥加藤友三郎伝」は、ゆまに書房が復刻していて、まだ在庫があるかもしれません。ただし、1.5万円もするので、私にはとても手が出せそうにありません。歴代総理大臣伝記叢書(第13巻)価格:14,700円(税込、送料別) そこで、豊田穣著「蒼茫の海―海軍提督 加藤友三郎の生涯 (集英社文庫)」で我慢しようと思っています。この本は絶版になっていますが、格安で入手可能です。手元に届いたら、感想文でも書いてみようと思っています。 ところで、下村寅太郎は、加藤の写真を見て、次のような印象を持ったようです。 『秀才らしい気負いやポーズはまったく見られない。写真はむしろ平凡な印象すら与える。しかしそこにはむしろ静まりかえった澄みきった才知の存在が窺われる。』 加藤のこの「澄みきった才知の存在」が発揮されたのは、日露戦争後、1921年のワシントン軍縮会議なのかもしれません。 この折、軍縮反対派の首席随員加藤寛治中将と条約をまとめようとする首席全権加藤友三郎海軍大臣とが、激しく対立します。 加藤友三郎の海軍次官宛ての口述筆記は、まさしく加藤随員を諭すためのものでした。 『国防は軍人の専有物にあらず。 戦争もまた軍人にてなし得べきものにあらず。・・・』 しかし、加藤随員は、加藤友三郎の見識を理解できず、腹痛だと言って帰国してしまったそうです。 このように、海軍の良識の具現とも言える加藤友三郎なのですが、一般の人からは、「ミイラのようなしかもミイラほどの愛想のない」といわれ、彼を顕彰すべき伝記にさえ、『趣味嗜好は範囲極めて狭くしかも単調』と書かれてしまうのです。そして、『茲に特筆せざるべからざるは』ともったいぶって書かれていたことは、加藤は漫画が好きだということでした。