ノベルの森

2017/11/24(金)14:59

ある夏の日に 〈最終話〉元の世界に帰ろう

SF小説(245)

​​​​​​​​​​​​​​​   ある夏の日に  〈最終話〉元の世界に帰ろう 期待通りの結末が、目の前の巨大なスクリーンに映し出された。 地球に迫る彗星に第2の彗星が追いつき、衝突!瞬間に生じたとてつもないエネルギーは、光そのものとなりスクリーンを眩しく照らした!2つの彗星は粉々になり、地球の大気との摩擦熱によって燃え尽き花火のように跡形もなく散った。 災害対策本部では、全員が事の成り行きを息をすることも忘れたように緊張して見守っていた。祈りが通じたその瞬間、言葉に言い現しきれない声が、会場の空気を膨張させたかのように膨らみ、手を取り、抱き合って喜ぶ。その姿はスクリーン上に何度も再生され、衛星中継によって世界中に歓喜の輪を拡げた! 勇一が、ヨーコが、アンドリュー、マギーも! みんなで肩を抱き合って、そしてヨーコはやっぱり涙を抑えきれず勇一にしがみつき喜びを伝えた。かけがえのない父親を失わずに済んだのだから、当然のこと。多摩川流域で被害にあった方達の喜びも同じに違いない。 ・・・・・だけど。 なにか、聴こえてこないか・・・ 何かが言っている・・・調和が乱れている・・・・と 第3の目が伝えてくる。 この世界も、その他の世界でも、みんな懸命に生きている。 どの世界にも、守られるべき調和がある。ほんの僅かな時間だけ侵入した異邦人たちに悪意は無いにしても。いくつもの世界に影響を残してきたであろうことは否定できない。 「ヨーコの父親を助ける為」 俺たちにとっては大事なこととはいえ、変化を望む俺たちが訪れた。その時点で既にその世界の未来に変化をもたらした事になる。 俺達さえ現れなかったなら、起きる筈の無い変化だ。その変化がそれらの世界にどんな事態をもたらすことになるのか、それを確かめる術さえ今はもう無いのだ。 無責任極まる。 第3の目の力は、力を持つ人のことだけを観ているのではない。今、この時は、近づいてくる人を観て最良の接し方を判断しやすくしてあげたり、この先の事では、大事、小事に渡ってより正しい判断が出来るように、特に人間関係においては、時によって辛い判断を下す事もありうる。 利己的願望を抱いた上での判断を下すなら、その世界にとって負の変化をもたらすことになる。第3の目の力は、それ程のものであると、今の勇一は知っている。 勇一は決断した。この世界を去る。この世界にも、別の世界にも、誰にも、「これ以上の迷惑をかけることはない」そう断言することなど誰にも出来ないからだ。 私は、全力を出し切ってでも、元の世界に戻ろうと思う。例え何も変えられず、悲しい思いをしたとしても耐えて生きよう。 そうすべきではないか・・・ 今まで、立ち入っては直ぐに去っていった幾つもの世界の未来に、もたらした変化がその世界の人々にとってマイナスに作用したなら、それは許されることではない。 たとえ愛する人の為だったとしても、その行為は多摩川流域に住んでいて、落下してきた彗星の犠牲となって亡くなった、ヨーコの父親を含む、数人の人たち・・・確かに彼らとその家族たちにとって、それは悲劇である。 だがしかし、他の世界に暮らす住人たちにとっては想像することさえ叶わない、別世界の出来事なのだから・・・そんな人達の世界を乱す資格も権利も我々は一切持ち合わせていない。 元の世界のヨーコを、父親の墓参りに連れていこう。悲しみを繕うのではなくて、共有するのだ。チャーリーの店にいい音を聴きにいこう。普通の人が過ごすように、普通に生きていこう。 勇一は、顔を上げた。「元の世界へ、どうか俺を導いてくれ」第3の目に、自身の胸中に!強い願いを発しながら歩き出した。                                               完 今まで読んで頂いたこと、心から感謝します。 これから暫くは日記を書く。そのくらいしか出来そうにない。僕にとってはこれでも、やっと完結!でしたので^^ さて、今日の好きな曲は、 The Beatles - The Long And Winding Road です。 Ken W さん、この動画をUpして下さり、本当にありがとうございました。 いつも応援ポチをありがとうございます。 今日もよろしくお願いします。♪    ​​​​​​​​​​​​​​​

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