|
カテゴリ:エッセー随想・散文
透けている人
その日は仕事も完全にオフで12時頃やっと起きて 何食べよう?大黒屋の総菜がいいな、と腰を上げた。「4丁目峠」を過ぎて3丁目の商店街の入口が見えてきた。 ・・・何?俺の視界に得体のしれないものが映り込んできた。 旅姿の僧侶らしき人が3人、角の家から出てきた。托鉢行?真ん中に一際存在感を放つ僧形の人。その人を前後で挟むかたちで若い僧形の人が2人、師弟関係? そんなことより、どうして向こうが透けて見える? あ!これって霊っていうか、知的生命体? 目が離せずその姿を追っていると・・・!真ん中の人が立ち止まった!前後の若い人たちはやや慌てて立ち止まる。 真ん中の人がこっちを向いた。 目がすごい!身体は透けてるのに瞳だけ黒くて透けていない。 そのお坊様、なんだか珍しいものを見るような目をして俺を凝視してる。 いや、珍しいのはそちら様ですって。 こんな昼間っから、23区内で姿を現すって・・・ 気が付くと俺の周囲を歩く人はみんな「なに、そこで突っ立ってんの!」と言いたそうな顔して通り過ぎて行く。 この3人のお坊さんのこと、見えてるのは俺だけ?・・・そうみたいだ。 やっぱりこれって、世にも不思議なあれなんだ。けど、俺を見るお坊さまの目は「気高い」とか「慈しみ」といった感情をおれに抱かせた。 だから、つい俺は微笑んだのだ。 気のせいかあちら様も微笑んでくれたように見えた。 そして3人様ご一行は商店街の角の道を曲がって真っすぐに北方向に進んで行った。 その時、聞き慣れた声がした。「おーい!〇田!」 それは友人の丸山だった。〇田と呼びかけた家から男が飛び出てきた。 丸山の説明によると、〇田なる人は今日、家でバルサンを炊いたが、仏壇の扉を閉め忘れて実行、終わったころを見計らって帰宅してみたら、仏壇の中の曼荼羅が真っ白! バルサンの煙がくっついたのか、と指で軽くこすってみたが、一文字残らず消えてしまっていたとのこと。 〇田はうずくまって震えている。 多分さっきの3人の僧形をした方々が・・・と判断したので、おれが見たことの一部始終を丸山に話して聞かせた。 「それだよ!きっと!・・・」 すっかり取り乱した〇田に気合を入れて、歩いて15分ほどの彼らの宗旨のお寺さんに真っ白になった曼荼羅を持参して訳を話したら、とんでもなく厳しいお説教を受け、近々本山に参詣しお詫びの題目をあげ、誓約書を提出することになったとか。 その後、ある厳しい修行を重ねたある方にお会いした時に、この話をすると 「そのお坊様が何故あなたをじっとご覧になられたか分かりますか?」 「いえ、未だに分かりませんが」 「そのお坊様のお姿が見える人は、非常に稀だからです」 なるほど、お陰で長年胸中につかえていたものが取り払われてすっきりした気分になれました。 以上、私にとって貴重な体験でした。 気に入っていただけたなら、ポチっと応援をお願い致します。(^^♪
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[エッセー随想・散文] カテゴリの最新記事
|