2009/03/11(水)23:20
『さまよう刃』 東野圭吾 感想
ま~た何という重たいテーマを持ち出してきはったんだろう、東野さんは。
と言いつついそいそと手にとる。
2004年12月、単行本発行。2008年5月、文庫本発行。
本屋さんの5倍ポイントデーだったもんで、つい当日にゲット。
小説でそんなのはハヂメテ
不良少年たちに蹂躙され死体となった娘の復讐のために、父は仲間の一人を殺害し逃亡する。
世間の考えは賛否が大きく分かれ、警察内部でも父親に対する同情論が密かに持ち上げる。
はたして犯人を裁く権利は遺族にあるのか?
誰もが正しいことをしているようなんだけども、
現実問題照らし合わせば、間違ったことだと言われてしまう。
正義が分からなくなったところで私もさまよってみるm(_ _)m
法律って何だろうね?
未成年者だけに限らず、犯罪者を守る為の手厚い日本の法律は、被害者をバカにしているかのよう。
それに嫌気がさすから、私は長峰に賛成な気持ちが俄然強い。
親でもあるから、我が子が手にかけられたことを考えるとなおさら。
と、誰でも〔自分なら〕とかぶらせるのは”被害者の親”としての立場なんだろうと思う。もちろん私もそうであったように。
長峰が100%正しいとは言えないけれども、最愛の娘の蹂躙される姿のテープを見ている最中にその犯人がやってきたのなら私には当然とも思える行動だったんじゃないかと。
視聴者は、ただ「被害者の父の復讐」としか知らされてないからさらっとコメントが出来る立場にあるのは、一国民である自分の今の立場と変わりない。
ただ、加害者の親としての気持ちに沿って読むことになれば、また別の感情を描いていたのだろうか。
少女を殺した男の母親たちが登場するのは、別の視点からの少年法を語る上で登場人物としてはパッとしないキャラであっても、登場させることは重要でした。
特に未成年だから、加害者の親も矢面に立たされるわけで...。
ハウダニット、フーダニット等の、「犯人はお前だ!」的なミステリ要素は全くなく、ただ東野氏が今の日本社会や法律について、警鐘を鳴らしているのではないかと感じ取れました。
犯人を追う被害者の父、今は加害者。
事情を知った上で助ける女性。
長峰に、同情に近い感情を持ちながらも彼を追う警察官、そして”謎の密告者”。
長峰以外にも親として被害者になった鮎村もおりましたが、
踊らされる形だけに見えて同情を寄せたくなる。
しかし、それも今の日本の被害者として有り得る件であると思うとものすごく悲しくなりました(*ノ_