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カテゴリ:個人図書館
「父ちゃんと母ちゃんは相談をしてね、かあいい文六ちゃんが、狐になってしまったから、わたしたちもこの世に何の楽しみもなくなってしまったで、人間をやめて、狐になることにきめますよ」 ≪新美南吉(1913-43)は,わずか29歳,2冊の童話を出版しただけでこの世を去ったが,底抜けに明るく,ユーモアと正義感にあふれた彼の童話は,今日多くの人の心をとらえ,賢治,未明,三重吉らとならぶ児童文学の代表的作家の1人となった.「ごん狐」「おじいさんのランプ」「最後の胡弓弾き」「花のき村と盗人たち」等14篇を収録.≫ ●『新美南吉童話集』 ●新美南吉(にいみ なんきち) ●岩波文庫 ●読了日:2,3年前の或る日 『ごんぎつね』や『手袋を買いに』で有名な新美南吉です。 でも、私が思わず声を出して泣いてしまったのは、この『狐』という作品です。 文六ちゃんは近所の子達に連れられてお祭りに行きます。 大人の下駄をはいてきてしまった文六ちゃんのために、みんなは途中で下駄屋に入って、小さい下駄を買ってあげます。 すると、そこのおばあさんが「晩に新しい下駄を下ろすと、狐につかれるぞ」といいます。 それで、みんな何だか恐くなって、祭りが終ってもだれも文六ちゃんを家まで送っていこうとしません。 一人さびしく家に帰った文六ちゃんは、お母さんの胸に抱かれてねむりながら、言います。「もし、僕が、ほんとに狐になっちゃったらどうする?」 お母さんは笑って答えませんが、文六ちゃんがしつこく聞くので、真面目な顔つきになって、それじゃあ、私たちも狐になるよと言います。 文六ちゃんは、冬、餌をとりに山へ出たとき、猟師に見つかったらどうする?とお母さんにたずねます。 するとお母さんは答えますが、それを聞いた文六ちゃんは泣き出してしまいます。 お母さんが、何と言ったか、私はあえてここでは書きません。 お母さんの言った言葉に、文六ちゃんと同じく、私も泣き出してしまいました。 大変な、母の愛です。 いつ読んでも胸がギューッとなります。 童話って、子供心にも大人心にもいいものです。 ※yahooブログからの転載です。アシカラズ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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