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≪ひたすら“人間の真実”を追い求めた孤高の作家、周五郎ならではの、重みと暗示をたたえた言葉455。生きる勇気を与えてくれる名言集。≫ ●『泣き言はいわない』 ●山本周五郎 ●新潮文庫 ●読了日:1998年2月13日 山本周五郎作品の中から、味のある重みのある言葉、文章、一節を抜き出した名言集。 山本周五郎作品はほぼ全部読みました。 新潮文庫から50冊近く出ているものも全部持っています。 それほど面白くて、それほど好きです。 真面目あり、ユーモアあり、涙あり、笑いあり、喜怒哀楽すべて味わえます。 時には主人公の吐く言葉にはっとさせられ、時には脇役のつぶやくひと言にじんわり来て…。 そんな、心に強く残る言葉をまとめたこの一冊、ときどき開いてはしみじみ考えたりします。 他の千万人にとっては些細なことでも、或る一人にとっては一生を左右するような場合がある。 という文章は、今でも心に留めています。 「人間というものは一方から好かれれば、一方から憎まれる、好評と悪評は必ず付いてまわるものだ、あらゆる人間に好かれ、少しも悪評がないというのは、そいつが奸譎(カンケツ)で狡猾だという証拠のようなものだ」 そういわれればそうかもしれない。と思ってしまう。 周五郎は現代の時代小説家なので、さすがにいまの世の中にも通じる言葉がたくさんですが、格言めいた「こうせよ」「こうあるべきである」という押し付けがましいものはありません。 「人間は自分の力でうちかち難い問題にぶっつかると、つい神に訴えたくなるらしい、――これがあなたの御意志ですとかね、それは自分の無力さや弱さや絶望を、神に転嫁しようとする、人間のこすっからい考えかただ」 どきり。 ときどき、こういった人間のずるさを指摘するところも見えますが、周五郎自信がそうであるのを自分でもわかっているようです。 「話だけ聞いて人のよしあしを云うもんじゃないよ、人間にはみんなそれぞれの事情があるもんだ、その人の心の中へ入ってみなければ、本当のことはわかりゃしない」 山本周五郎は、視点を多く持てといっているようです。 決して一方向からだけ見るのではなく、あらゆる方向から見て、判断する、それが大事だと。 他人を批難する前に、その人の立場になって考えてみることが必要だということです。 私もそれは痛感します。 ちょっとずれますが、仕事上でも交通ルールでもそうかも知れません。 買う側の客、売る側の店それぞれの主張があり、考えがあります。 客としてみるとおかしいんじゃないかと思うことも、いざ売る側の店員になってみるとそれが妥当だと思われる、そういうこともあります。 私はバイクに乗っての通勤ですが、バイクで走る私から見ると、車のマナーに憤ることもありますが、いざ車に乗っている人から見ると、バイク乗りの行動が頭にくることもあると思います。 人の立場にたって考えてみる、ということを心がけるようにしています。 この本の中で出てきた言葉にはそれぞれ作品名が書かれているので、気になったら、その作品を通して読むこともおすすめします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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