ナニワ金融道6を法的に観てみましょう。
*今日の日記は1月3日に放映された「ナニワ金融道6」のネタバレが含まれています。ビデオなどに撮って後日ご覧になるつもりの方はご注意ください。このナニワ金融道は結構法律を意識して作られていて、私のように法律を勉強する者にとっては面白いと同時に大変勉強になります。そこで、ちょっと法律的にナニワ金融道6を追ってみましょう。1、パチンコ依存症もちろん、パチンコにのめりこむこと自体は何ら犯罪ではありません。しかし、パチンコ依存症女は幼い子供を車内に置き去りにしていました。もし、こんな事をして子供を死なせたら、「過失致死罪」となります。仮に死ななくても、体調を崩させれば「過失致傷罪」となります。れっきとした犯罪になってしまいます。まあ、舞台設定が12月のようですから、子供が死ぬことはまず無いでしょう。ですが、褒められた行為ではありません。2、090金融劇中では、5万円を借りて一週間後7万円にして返すことになっていました。つまり、7日で40%です。いわゆるトイチ(10日で10%)もびっくりの高利です。法律では、1年で29.20%の利子しかとってはいけないことになっています(出資法)。つまり、365日で約30%までしか認められていません。思いっきり法律違反です。3、恋愛商法(デート商法)これはやっかいです。もちろん、理論的には、初めから騙すつもりで男に近づき物を買わせる行為は詐欺罪になります。ですが、その立証が出来ないのです。たとえ、女が男に近づいて宝石を買わせる様子を全てビデオに撮って裁判に持ち込んでも「買わせる時までは好きだったが、急に気が変わった。騙すつもりなど無かった」と言われたらどうしようもありません。恋愛感情の有無など本人以外は立証しようが無いのですし、心変わりすることが犯罪になるわけではありません。ただ、恋愛商法はキャッチセールスの一種ですから、劇中で灰原が語ったようにクーリングオフが出来ます。もし引っかかったらクーリングオフしてくださいとしか言えません。重々お気をつけ下さい。4、マルチ商法劇中にあるように、きれいなピラミッドを作って、購入者が払ったお金を上位者で山分けする商法が典型的なマルチ商法です。ですが、先日申し上げたDネットのようにちゃんとしたピラミッドが出来なくても購入者が新たな購入者を勧誘するように勧められる商法はマルチまがい商法だと思って近づかない方が無難です。ちなみに、劇中でちらっと出てきたねずみ講というのは、商品を使わずにお金だけをやり取りすることです。例えば、加入者がまず参加費として1万円を払って加入し、その加入者が新たな人を勧誘したらその新たな人の払った1万円のうち半分が勧誘者の取り分で、もう半分は本部に送るという形を想像していただければいいでしょう。これは、ねずみ講で間違いなく法律違反です(無限連鎖講防止法)。しかし、マルチ商法は「生産者→問屋→小売店→消費者」という正常な流通経路と区別をすることが困難なため、違法とはなっていません。しかし、マルチ商法には様々な規制がありますし、実質的には商品を介したねずみ講ですから、手を出さない方が無難です。また、劇中では「契約するまで返さない」というシーンがありました。これは刑法上の監禁罪となりますし、民法上の強迫行為となって契約は取り消すことが出来ます。5、帝国金融への捜索・逮捕刑事訴訟法上、捜索には令状が必要で捜索時には令状を見せなくてはなりません。劇中では見せてなかったような気がしますが、まあ時間の都合上削られたのでしょう(もしちゃんと見せていたらごめんなさい)。あと、劇中では警官の胸倉をつかんだ桑田が現行犯逮捕されそうになっていました。これは不当逮捕でもなんでもなく、職務中の公務員につかみかかったら公務執行妨害罪が成立してしまいます。なのであれは正当な逮捕なのです。皆さんもご注意ください。6、収賄罪灰原は何も悪いことをしていないのですから、釈放されて当然であり、正当な釈放に対してお金を払っても収賄罪にはならないのではないかとお考えの方もいるでしょう。しかし、正当な行為に対してもお金を払えば収賄罪が成立します。なぜなら、正当な行為にはお金を払っても良いとなると、国民は「公務員にはお金を払わないとちゃんと仕事をしてくれないのではないか」と思ってしまいます。これは不都合なので、正当な行為に対しても収賄罪が成立します。また、灰原は領収書をちらつかせて刑事に返済を迫っていますが、これは恐喝罪です。たとえ実際に借金があるとしても、その取立ての手段として相手を困惑させる行為を用いることは認められていないのです。以上のようにナニワ金融道には法的なお話が一杯です。ビデオに撮っておられた方はもう一度見返して、「あー、この場面にはこういう法律が適用されるんだ」と確かめていただければ、また違った楽しみ方が出来るのではないでしょうか。