|
カテゴリ:要件事実
第2章 金銭消費貸借契約 2 弁済の抗弁 さて,前回はあなたが清水君に2000万円を貸したという事例で,あなたが清水君に裁判する場合の「請求の趣旨」および「請求の原因」をお話しました。 では,清水君はどう反論することが考えられるでしょうか。 もちろん,請求原因について否認することもあるでしょう。「返還の合意は無く,贈与だった」と主張する場合もありえます。 ただ,やはり一番よくある反論は,契約成立は認めたうえで,弁済があったかなかったかですよね。 そこで,清水君が既に弁済したと思っている場合,清水君はどのように主張すればいいのでしょうか。 まず,契約成立は認めるのですから,否認ではありませんね。抗弁です。 そして,弁済と言うのは,一旦は契約が成立して,その契約の当初は問題が無かったが,お金を支払ったので,お金を貸した人の権利は消滅したというものですから,消滅の抗弁です。 抗弁は,原告の請求原因事実と同じように,要件事実に基づいて主張しなくてはなりません。 そこで,早速条文を見ましょう。 …ところが,弁済を直接定めた条文はありません。つまり,「この要件を満たせば弁済だ」とする条文が無いのです(民法474条は,第三者弁済を定めた条文であって,普通の弁済ではありません)。 そうなると,解釈で考えるしかありません。 まず,少なくとも弁済によって債権(=「お金などを支払え」と言える権利)が消滅するというのは当然と考えていいでしょう。消滅しなかったら,誰も弁済しません。 では,何故消滅するのでしょうか,それは債務(=お金などを支払う義務)の内容に見合ったものが,お金を貸した人に入るからですね。2000万円を貸したあなたの債権が消えるのは,2000万円の債務(=お金などを支払う義務)を負った清水君が2000万円をあなたに渡したからです。 突然,債権・債務と出てきましたが,大丈夫ですよね。あなたが清水君に2000万円支払えと言える権利(=債権)がある以上,清水君はあなたに2000万円を支払う義務(=債務)があります。 債権と債務は表裏一体です。 このように,1「債務の本旨に従った給付がある」と表現します。 そうすると,まず,債務の本旨に従った給付をしたという事実が,弁済の要件事実と言うことになります。 では,これだけで十分でしょうか。本問では,「被告は,原告に対し,△年△月△日,2000万円を支払った」と言うだけでいいのでしょうか。 これだけだと,単に2000万円を支払ったということしか分からず,別口債権に対する弁済をしたという可能性を否定できません。 つまり,2000万円を支払ったことは事実だが,それは2年前に貸したお金を弁済してもらっただけで,今回請求しているのは1年前に貸したお金だと言う場合もありえます。 ですから,清水君は弁済した2000万円が,今回請求された債権についてされたものであることまで主張する必要があります。これを,2「なされた給付がその債権についてされた(給付と債権の結びつき)」と言います。 清水君にしてみれば,面倒臭いなと思うところでしょうが,1も2も領収書さえあれば立証できますので,あまり面倒ではありません。 ということで,清水君が弁済の抗弁をだすには, 「被告は,原告に対し,平成〇年○月○日,本件消費貸借に基づく債務の履行として2000万円を支払った」 という事実を主張する必要があります。 ということで,弁済の抗弁は以上です。 応援していただける方は、下記のバナーをクリックしてください。 【参考本】 ゼミナール要件事実(2) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年04月15日 17時42分51秒
[要件事実] カテゴリの最新記事
|