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カテゴリ:倒産法
随分間が開いてしまいました。この記事は、13章の2の続きです。 まず,こんな問題があります。 清水君が,(株)清水工業という会社を経営しているとします。 そして,(株)清水工業が〇×銀行から借金をする際に,清水君が保証人になったとしましょう。 この保証は無償行為否認できるでしょうか。 実質的に見れば,(株)清水工業は清水君のものであり,(株)清水工業が,貸し金という利益を得ている以上,少なくとも無償ではないように思えます。 しかし,法的に言えば(株)清水工業と清水君は別個でありますから,清水君の債権者としては,否認して欲しいところです。 そこで,判例(最判昭和62年7月3日)は以下のように判断し,否認を認めました。つまり,(株)清水工業と清水君はあくまで別個だとしたわけです(改行は引用者)。 破産者が義務なくして他人のためにした保証若しくは抵当権設定等の担保の供与は、それが債権者の主たる債務者に対する出捐の直接的な原因をなす場合であつても、破産者がその対価として経済的利益を受けない限り、破産法七二条五号にいう無償行為に当たるものと解すべきであり(大審院昭和一一年(オ)第二九八号同年八月一〇日判決・民集一五巻一六八〇頁参照)、 右の理は、主たる債務者がいわゆる同族会社であり、破産者がその代表者で実質的な経営者でもあるときにも妥当するものというべきである。 けだし、同号にいう無償行為として否認される根拠は、その対象たる破産者の行為が対価を伴わないものであつて破産債権者の利益を害する危険が特に顕著であるため、破産者及び受益者の主観を顧慮することなく、専ら行為の内容及び時期に着目して特殊な否認類型を認めたことにあるから、 その無償性は、専ら破産者について決すれば足り、 受益者の立場において無償であるか否かは問わないばかりでなく、破産者の前記保証等の行為とこれにより利益を受けた債権者の出捐との間には事実上の関係があるにすぎず、 また、破産者が取得することのあるべき求償権も当然には右行為の対価としての経済的利益に当たるとはいえないところ、 いわゆる同族会社の代表者で実質的な経営者でもある破産者が会社のため右行為をした場合であつても、当該破産手続は会社とは別個の破産者個人に対する総債権者の満足のためその総財産の管理換価を目的として行われるものであることにかんがみると、 その一事をもつて、叙上の点を別異に解すべき合理的根拠とすることはできないからである。 次に,否認権を行使したらどうなるかという問題があります。 一応条文があります。 (否認権行使の効果) 第百六十七条 否認権の行使は、破産財団を原状に復させる。 つまり,破産財団との関係では,財産の現物が破産財団に戻ってくるわけです。ただし,詐害行為取消権と同様に,相対的無効とされています。 また,なんらかの事情で現物返還が不可能な場合,否認権行使時の時価を返還するよう求めます。 応援していただける方は、下記のバナーをクリックしてください。 【参考本】 Cーbook倒産法 この本は、倒産法の予備校本です。基本書に抵抗のある方は、こちらをおすすめします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年07月29日 08時52分30秒
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