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法律なんて怖くない!

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手形法

2004年08月14日
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カテゴリ:手形法

手形の支払を受けるためには、手形を振出人に
見せることが必要です。これを「呈示」と言います。

この呈示により、時効は中断され、
振出人は呈示された日以降の利息を支払わねばならないので、
事実上支払を強制されたことになります。
(その他に手形を呈示した人には、「遡求権保全効」が得られますが、難しいので無視して結構です)

このように支払を強制されるので
振出人は一刻も早く支払おうとします。
ということは、仮に手形を提示した人が無権利者であっても
払ってしまうかもしれません。

例えば、蒲原が清水君の振出した手形を三島さんから盗んできた場合、蒲原は無権利者ですから清水君は蒲原に支払う必要はありません。

しかし、蒲原が「清水→三島→蒲原」となるように裏書を偽造した場合、清水君から見れば蒲原はちゃんとした権利者に見えてしまいます。
しかも清水君は支払を強制される側ですから、蒲原が何となく
怪しいと思ったとしても「じっくり調査させてくれ」とは
言いにくいのです。
なので、このような場合に支払ってしまった人を保護してあげる
必要があります。
そこでこのような条文があります。

第四十条  
○3 満期ニ於テ支払ヲ為ス者ハ悪意又ハ重大ナル過失ナキ限リ
其ノ責ヲ免ル此ノ者ハ裏書ノ連続ノ整否ヲ調査スル義務アルモ
裏書人ノ署名ヲ調査スル義務ナシ

早い話、「悪意又ハ重大ナル過失ナキ限リ」
裏書がちゃんと連続してるか調べさえすれば
払ってしまった人を保護してあげるよってことです。
具体的には、正しい人に支払ったとみなしてもらえるのです。

では、「悪意又ハ重大ナル過失ナキ限リ」とは何でしょう。
今までこのような表現が出てきたら「知らなかったし、知らないことについてやむを得ない事情がない場合」であると説明してきました。
しかし、例えば「蒲原が盗人であることは新聞には載っていないが、テレビには出ていた」なんて場合もあります。
そのような時に「テレビを見ていれば蒲原が盗人であることはわかったはずだ。清水君、君には重過失があるぞ」と支払を強制されるのは辛いものです。
そこで、清水君を保護する要件をもう少しゆるくしてあげる必要があります。

具体的には、相手が無権利者であることを容易に証明しうるのに
あえて支払ったこと、あるいは容易に証明をして支払を拒みうるのに拒まず支払ったことについてやむを得ないとはいえないことを言います。
このように最悪裁判になった場合のことまで想定して保護してあげるのです。

この場合、清水君は蒲原が盗人であることを容易に証明しうるのに
あえて支払ったか、容易に証明をしい支払を拒みうるのに
拒まず支払ったことについてやむを得ないとはいえない場合には
その支払は正しい人に支払ったとはいえず、清水君は三島さんから
請求されたらもう一度支払わねばなりません。
そうでなければ、蒲原への支払を一回すればもう誰からも請求されることは無いのです。

手形は怖いものですが、支払いについては怖がることはありません。








最終更新日  2004年08月14日 00時43分32秒


2004年08月13日
カテゴリ:手形法

まずは、手形法17条をご覧下さい。

第十七条  

約束手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ
振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ
所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ
但シ所持人ガ其ノ債務者ヲ害スルコトヲ知リテ手形ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
(引用者注・「為替手形」を「約束手形」に置き換え。以下同じ)


昨日は、「約束手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ
振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ
所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ」
の部分についてお話しました。

今日は「但シ所持人ガ其ノ債務者ヲ害スルコトヲ知リテ
手形ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ」の部分についてお話しましょう。

といってもよくわからないのは「害することを知りて」の部分ですね。
単に
「悪意」とは言わず、あえて「害する」と言っている以上
単に知っているだけでは不十分なようです。
確かに、昨日の例で、草薙氏が単に詐欺の事実を知っているだけで
お金を払ってもらえないのでは困ります。
では害するとはなんでしょうか。

そこで
1、手形を取得する時に、

(手形を取得する時を判断基準にしてくれなければ安心して
 手形を取得できません)
2、手形の満期時において振出人が手形のお金の支払を拒むことは確実だ

(手形のお金が支払われるかどうかが問題となりますから、「満期時」となるのは当然でしょう。
また、「確実」と言う認識を要求することで
裏を返せば「害することを知っていた」となります。
支払を拒否することが確実と知っていたのにあえて手形を取得するというのは手形振出人に迷惑をかけるつもりであったと思われても仕方ありません)

ということを知っていれば「害することを知りて」と言えるでしょう。

つまり、昨日の例でいえば草薙氏が、手形を受け取る時に、
詐欺の事実を知っていて清水君が支払を拒むことが
確実であると知っていて手形を手にいれた場合は、
騙した張本人でない草薙氏に対してもお金の支払を
拒むことができます。

これが、「但シ所持人ガ其ノ債務者ヲ害スルコトヲ知リテ
手形ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ」の部分です。

手形もある程度は融通を利かせてくれるのです。






最終更新日  2004年08月14日 00時49分44秒
2004年08月12日
カテゴリ:手形法

本来第3章は手形のお金を払ってもらう時というくくりでした。
しかし、手形のお金を払ってもらえる場合は、何の問題もありません。何の問題も無ければ特にお話することもありません。

ですから、どういう場合にお金を払ってもらえないのかということをお話しましょう。
まずは、手形自体が無効になってしまう場合です。
これを「物的抗弁(ぶってき・こうべん)」と言います。

例えば、手形に必要な要件がかかれていない場合です。
金額がかかれていなかったりすれば払いようが無く、
手形は無効になってしまいます。

次に特定の相手にだけお金の支払を断れる場合があります。
これは特定の「人」にのみ支払を断れると言うことで、
「人的抗弁(じんてき・こうべん)」と言います。

第十七条  

約束手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ
振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ
所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ

但シ所持人ガ其ノ債務者ヲ害スルコトヲ知リテ手形ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
(引用者注・「為替手形」を「約束手形」に置き換え。以下同じ)

例えば、清水君は蒲原に騙されて手形を蒲原に振り出してしまいました。
そして、蒲原は草薙氏に手形を譲渡してしまったのです。
この場合、清水君は騙した張本人である蒲原の支払請求を拒めるのは当然です。
しかし、草薙氏がそれを知らなかった場合には、草薙氏は何の問題も無い手形だと思って手形を手に入れているのですから、
「これは詐欺によって奪われた手形だから無効です」と言われては
草薙氏は困ってしまいます。

そこで、清水君は蒲原に対してのみ支払を拒めて、草薙氏に対しては拒めません。このように特定の人にしか支払を拒めないことを
「人的抗弁」と言います。
これは清水君がちょっと可哀想ですが、手形を安心して使ってもらうためには止むを得ません。
これが17条の
「約束手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ
振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ
所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ」
という部分です。

これは何も知らなかった人が安心して手形を使えるように定めた条文ですから、知っていた人まで保護してあげる必要はありません。
それが、「但シ所持人ガ其ノ債務者ヲ害スルコトヲ知リテ
手形ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ」と言う部分です。
これについては明日と言うことにしましょう。






最終更新日  2004年08月12日 00時04分05秒
2004年08月11日
カテゴリ:手形法

物の売買において、相手方が無権利者であった場合、
無権利者からは物は受け取れませんから、
何も得られないのが原則です。
しかし、一定の条件のもとに即時取得によって
物を得られる事がありました。

では、手形はどうでしょうか。三島さんの振り出した
手形を蒲原から清水君が裏書されて受け取ったとします。
しかし、その手形は蒲原が三島さんから盗んだものだったのです。
つまり、蒲原は三島さんからちゃんと裏書されたかのように
裏書を偽造していました。
そうすると、形式的には裏書が「三島→蒲原→清水」と連続しているので清水君はそれを信用して騙されたのです。

この場合、清水君は無権利者から手形を得たことになるので、
手形の権利を得ることができないのが原則です。
しかし、裏書はちゃんとした人がしたものか盗人がしたものかは
区別がつきません。

それなのに「この手形は盗人が裏書しているから無効です」なんて
言われたら誰も手形を信用しなくなります。
そこで形式的に裏書が連続していれば、それを信用した人を
保護してあげる必要があります。
つまり、手形にも即時取得を認めてあげましょうということです。


第16条
○2 事由ノ何タルヲ問ハズ約束手形ノ占有ヲ失ヒタル者アル場合ニ於テ
所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ手形ヲ返還スル義務ヲ負フコトナシ
但シ所持人ガ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ之ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
(引用者注・「為替手形」を「約束手形」に置き換え。以下同じ。)

ちょっと読みにくいですが、裏書が連続している手形を手に入れた場合、
事情が盗品だろうが何だろうが、その事情を知らず知らないことがやむを得ない場合には手形を手に入れることができるということです。
これで手形を手に入れようとする人は、裏書がちゃんと連続しているかどうかを確かめれば手形を手に入れられる可能性が高いので、安心して手形を使うことができます。







最終更新日  2004年08月11日 00時33分52秒
2004年08月10日
カテゴリ:手形法

裏書は手形を譲渡する人が、譲渡される人の名前を手形裏面に書くことです。
手形の裏面に書くから「裏書」と言うのだと思います(多分)。

では、裏書にはどんな効力があるのでしょうか。
まずは裏書は手形を譲渡するための手段ですから、
当然手形の権利を移転させる効力があります。
条文もあります。

第十四条  裏書ハ約束手形ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ移転ス
(引用者注・「為替手形」を「約束手形」に置き換え。以下同じ)


次に、裏書された人は振出人が払えなくなった場合、手形に書かれた金額を払わねばなりません。
例えば、清水貴君が100万円の手形を蒲原達樹に振り出し、
蒲原達樹が三島裕子さんに裏書して譲渡した場合を考えましょう。
もし、清水君が払えなくなった場合、蒲原は三島さんから100万円の請求を受けます。
これは、裏書されればされるほど請求できる人が増えていくので
より手形を流通させることができるだろうと言う考えから生まれたものです。
(ただし、実務では手形の満期前に手形が譲渡されることは、
満期を待っていられないくらい振出人の資金状態が悪いと判断され、裏書の多い手形ほど信頼されないこともあるそうです)

ちなみにナニワ金融道ではこの性質を利用して
ハナから保証人にする目的で裏書をさせるシーンが時々出てきます。
ですから、何も受け取っていないのに「手形に裏書して」と言われたら保証人にするつもりなのではないかと疑ってくださいね。

また、裏書に権利移転の効力があるということは
逆にいうと裏書が連続している手形を持っている人は
ちゃんとした手続で手形を手に入れたものと考えられるので
正当な権利者であると推定されます。
条文もあります。

第十六条
約束手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ
之ヲ適法ノ所持人ト看做ス
(以下略)
(引用者注・「為替手形」を「約束手形」に置き換え。以下同じ)


つまり、裏書さえ連続していれば相手から「お前は無権利者だ」と
立証されない限り、手形に書かれたお金を請求できます。
これはかなり強いですね。
皆さんも手形を手に入れるときは裏書をちゃんと点検しましょう。







最終更新日  2004年08月10日 00時38分21秒
2004年08月09日
カテゴリ:手形法

手形は、権利を簡単に移転できるのも特長だと言うことを
前に申し上げました。

というのも、普通の借金から発生したお金の請求権を
他人に譲渡しようと思ったら、債務者、つまりお金を借りた人に
「今度から○○さんに払ってくださいね」と通知しなくてはなりません。

例えば、清水君が三島さんからお金を借りた場合、
三島さんがその権利を蒲原に譲渡したければ
三島さんは清水君に「今度から蒲原に支払ってくださいね」と
言わなくてはなりません。
それは清水君が誰に払うべきか迷わないようにするためです。
しかし、手形ではそれが不要だというのです。
具体的にはどうすればいいのでしょうか。

手形の権利は「裏書(うらがき)」することによって
譲渡できます。債務者に対する通知は不要です。
例えば、清水君が三島さんに手形を振り出した場合、
三島さんは蒲原に「裏書」するだけで権利が譲渡されます。
清水君に通知する必要はありません。
なぜなら清水君は手形を持って人に払えば良いので、
通知が無くても誰に払って良いか迷わないからです。

では、「裏書」ってなんでしょうか。

第十三条  
裏書ハ約束手形又ハ之ト結合シタル紙片(補箋)ニ之ヲ記載シ裏書人署名スルコトヲ要ス
(引用者注・「為替手形」を「約束手形」に置き換え。以下同じ)

何か難しいことを書いていますが、手形を譲渡する人が譲渡を受ける人の名を手形に書き込むということです。
先ほどの例でいえば、三島さんが
蒲原の名を書き込めばそれで十分です。

手形の譲渡はこんなにも簡単なのです。
明日は裏書について詳しく見ていきましょう。






最終更新日  2004年08月09日 00時05分13秒
2004年08月07日
カテゴリ:手形法

蒲原が、清水君の名を騙って手形を振り出すのは偽造となります。
では、次の場合はどうなるでしょう。
清水君がちゃんと振り出した100万円の手形を
蒲原が何ら問題なく受け取りました。
しかし、その後金に困った蒲原は金額の欄に0を一個
加えてしまったのです。
そして見た目は1000万円になった手形を、蒲原は
三島さんに譲渡してしまいました。

これは偽造とよく似ていますが、清水君の名を
騙ったわけでは無い以上、偽造とはいえません。
このようにちゃんと問題なく振り出された手形の一部を変更することを「変造」と言います。
そして、これにはちゃんとした条文があります。

第六十九条  
約束手形ノ文言ノ変造ノ場合ニ於テハ
其ノ変造後ノ署名者ハ変造シタル文言ニ従ヒテ責任ヲ負ヒ
変造前ノ署名者ハ原文言ニ従ヒテ責任ヲ負フ
(引用者注・「為替手形」を「約束手形」に置き換え。以下同じ)

何か難しく書いていますね。でも、言いたいのは変造前の段階で
手形を手に入れた人は、その後何か手形において問題に巻き込まれても変造前の金額の範囲内でしか責任を負わず、
変造した人・変造後に手形を手に入れた人は変造後の
金額について責任を負うということです。
この場合、清水君は「僕は100万円の手形のつもりで振り出したんだ。だから100万円までしか払えない」と三島さんに言うことができます。
しかし、蒲原は変造をした張本人ですから、
三島さんに1000万円支払えと言われたら1000万円を払わなくてはならないことになります。

しかし、蒲原はわざわざ変造しているのですから、
おそらく三島さんに手形を譲渡した後行方をくらまして
しまうでしょう。
と言うことは三島さんは清水君に何とかして欲しいと考えるはずです。
と言っても、清水君だって自分の知らないところで変造されたからと言って責任を取らされたのではたまったものではありません。
安易に責任をとらされるくらいなら、今後手形を使うのは
止めようと言う話になります。
そこで、第1章の3のように清水君に責められるべき点があれば
清水君に責任を取ってもらいましょう。
つまり、変造しやすい手形を振り出してしまった場合には
責任を取ってもらうのです。
そこでこの条文を類推適用(るいすい・てきよう)します。

第十条  
未完成ニテ振出シタル約束手形ニ予メ為シタル合意ト異ル補充ヲ為シタル場合ニ於テハ
其ノ違反ハ之ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ
但シ所持人ガ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ約束手形ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ

この条文は、手形に金額を書かずに振り出して、その後金額が確定したら手形を受け取った人が金額を書き込むという危険極まりない手形を振り出した場合に、決められた金額以上の金額が
書き込まれてしまった場合が想定されています。

その場合、決められた以上の金額が書き込まれた手形であることをしらないし、知らないことがやむを得ない人が受け取った場合、
振り出した人は書いてある通りの金額を支払わねばならないと
されています。

そして、決められた以上の金額が書き込まれたというのは、
予め書かれた金額以上の額を書き込んでしまう変造とよく似ています。
さらに、そもそも変造ができると言うことは、それだけ
変造しやすいと言うことであり、手形に金額を書かずに振り出して、その後金額が確定したら手形を受け取った人が金額を書き込むという危険極まりない手形と同じくらい危険だったと言うことなのです。
そこで、変造しやすい手形を振り出した場合も第10条の類推適用によって変造されたことを知らないし、知らないことがやむを得ない人から請求されたら振出人はその変造された額を払わねばなりません。

ということはやはり手形は危ないものじゃないかとお考えかもしれません。
しかし、普通手形はチェックライターで金額を打ち込み、
3桁ごとのカンマを打ちますから、ここまでやって金額が
変造されることは不可能に近いです。
つまり、金額が変造される場合とは手書きで、しかも
カンマを打たなかった場合など不注意な場合が多いと言うことです。
ですから安心して手形を使ってください。









最終更新日  2004年08月07日 00時21分08秒
2004年08月06日
カテゴリ:手形法


偽造とは、本人から頼まれたわけでもないのに
名前を偽って手形を振り出すことを言います。
例えば蒲原達樹が「清水貴が手形を振り出しました」と手形に書いて手形を振り出すことを言います。
これについては当然条文があるのかと思ったら
手形法には条文が無いのです。
では、手形が偽造された場合、どうなるのでしょうか。

ここで、本人から「代わりに手形を振り出してね」と
お願いされていないのにお願いされたかのように
ふるまって、本人に代わって手形を振り出した場合には条文があります。
1、代理権の存在
(=本人が代理人に「代わりに契約してきてね」とお願いすることです)

2、代理人による意思表示または意思表示の受領
(=代理人による契約と考えれば十分です)

3、代理人が本人の名を示すこと(顕名)
(=これが「本人のためにする事を示して」ということです)

が必要なところ、1が欠けていた場合には条文があるのです。

第八条  
代理権ヲ有セザル者ガ代理人トシテ約束手形ニ署名シタルトキハ
自ラ其ノ手形ニ因リ義務ヲ負フ
其ノ者ガ支払ヲ為シタルトキハ本人ト同一ノ権利ヲ有ス権限ヲ超エタル代理人ニ付亦同ジ
(引用者注・「為替手形」を「約束手形」に置き換える。以下同じ)

「代理権を有せざる」というのが「代理権が存在していない」ということです。
つまり、蒲原が清水君からお願いされてもいないのに、
「清水貴の代理人の蒲原達樹が振り出しました」という旨の事柄を手形に書いて
手形を振り出した場合は8条によって蒲原がお金を払わなくてはなりません。
これを「無権代理(むけん・だいり)」といいます。

これと偽造を比べてみてください。
偽造は、蒲原達樹が「清水貴が手形を振り出しました」と手形に書く事であり、無権代理は、蒲原達樹が「清水貴の代理人の蒲原達樹が振り出しました」と書く事です。
つまり、この二つの違いは代理人であることを名乗ったか否かに過ぎません。
また、偽造した人(蒲原)が「確かに無権代理だったら私はお金を払うべきだろう。しかし、私のしたことは偽造であって無権代理ではないからお金を払う必要は無い」と言い逃れできるとしたのでは不都合極まりないですね。
そこで、偽造者にも手形法8条によってちゃんと責任を取ってもらいます。

こんなに長々と述べましたが、結局当たり前の結論に落ち着くんですね・・・。








最終更新日  2004年08月06日 00時17分49秒
2004年08月05日
カテゴリ:手形法

手形は何も記載せず、手形帳に綴じこまれたままでは
ただの紙切れなのは当たり前です。
金額すら書いていないのですから。
では、金額など手形の要件を書き込みさえすれば
手形の権利・義務が発生するのでしょうか。

手形の要件を書き込みさえすれば権利が発生するとなると
清水君が蒲原にピストルを突きつけられて「手形に100万円と書き込め」と言われて言われるままに書き込み、その手形を蒲原に奪われた場合でも、清水君はその手形を受け取った人に100万円を請求されれば払うしかないことになります。
とすると、手形は非常に危ないものとなり、誰も手形帳を持とうとは思わなくなってしまいます。

そこで、こう考えてみましょう。
手形は借金契約をするのとよく似ていると申し上げました。
そして、契約とは約束(要望)と意思表示の合致でした。
従って、手形でも何らかの約束が必要と考えてもいいでしょう。

ここで、手形では要件の書き込まれた手形を渡すことで、「○○万円を支払います」という約束が伝わり、手形を受け取った時点で「わかりました。○○万円を貸したことにしましょう」という意思表示がなされ、約束が合致したことになります。

従って手形は相手に交付してはじめて約束が合致し、契約が成立したと考えるのがいいでしょう。
そして契約が成立すればはじめて手形上の権利・義務が発生し、
手形を振り出した人はお金を支払わねばならなくなります。
これを「交付契約説」と言います。

つまり、交付契約説の場合には、
清水君が蒲原にピストルを突きつけて「手形に100万円と書き込め」と言われて言われるままに書き込み、その手形を蒲原に奪われた場合、例え外見はちゃんと要件を満たしている手形であっても交付が無い以上手形としての権利・義務は発生せず、清水君は誰に請求されようとも100万円を支払う必要はありません。

これで、手形帳を持っていてもピストルを突きつけられて
やむなく手形に要件を記載させられてしまった場合には
お金を支払う必要はありませんから、
人々は安心して手形帳を持つことができます。

しかし、これはこれでまた問題があります。
交付されていない手形であっても外見はちゃんと
手形の要件を満たしていれば、その手形は
何の問題も無く交付された手形だと勘違いされることは
十分ありえます。

それなのに、「あ、これはもともと交付されていない
手形だから無効ですよ」と言われては、
今後手形を受け取る際に一々この手形は
ちゃんと交付された手形かどうか調べねばならなくなります。
これでは面倒くさくなり、「面倒だから手形を使うのは
やめよう」と言う話になります。
そこで、一定の場合には外見を信じて手形を受け取った人を
保護することが必要です。しかし、あまりに保護しすぎると今度は
先ほどのように「手形は危ないから使うのをやめよう」と言われてしまいます。
ではどうすればいいのでしょうか。

そこで、交付の無い手形を世の中に出してしまった場合には、
1、ちゃんとした手形のような外見があり、
2、その外見を発生させてしまったことにつき責められるべき点があれば


たとえ交付が無くても、手形振出人とされた人はお金を払わねばならないとするのが良いのではないでしょうか。
(振出人とは「私がお金を払います」と手形にかかれた人を言います)
つまり、1だけで手形に書かれたお金を払わねばならないとすると
「手形は危ないものだから持つのは止めよう」と言われてしまいます。
そこで2によって、「貴方は外見の発生を食い止めることができたはずなのにできなかった。
その責任をとってちゃんとお金を払え」と言うことになれば
手形の振出人とされた人も「確かに私が悪かった」と納得した上で
お金を払うので「手形は危ないものだから持つのは止めよう」とは
思わないでしょう。むしろ、「今度は責められないように手形を使おう」と考えます。

また手形を受け取った側も「手形がここにある以上、ちゃんと交付された手形だろう。万一交付されていなくても、多分その振出人とされた人が何か責められるようなことをしたのだから払ってくれるだろう」と考えますので外観を調べることなくお金を受け取ることができます。
これで、手形を振り出した側も、受け取った側も手形を信用してくれます。

では、「責められるべき点」とはなんでしょうか。
これは手形の保管に責められるべき点がある場合をいいます。
例えば、清水君が振出人とされている、交付を欠いた手形を
三島さんが受け取った時には、「清水君がちゃんと厳重に保管していれば私はこんな交付を欠いた無効手形をつかまされることもなかった。ちゃんと保管していなかった清水君が責任を取るべきだ」といえる場合には清水君はお金を払わなくてはなりません。

ですから、先ほどのピストルを突きつけられて手形に金額を
書いてしまったという場合には保管に責められるべき点はありませんから清水君はお金を支払う必要がありません。

しかし、金額を書き込んだ手形を机の上に放置して、その手形が蒲原によって盗まれ、何も知らない三島さんに渡ってしまった場合には清水君の手形の保管に責められるべき点がありますから
清水君はお金を支払わねばなりません。
この場合、手形を金庫に入れておけば良かったのですから、
清水君は「手形を使うのを止めよう」とは思わず、
「今度からちゃんと保管しよう」と思うでしょう。

このように手形は振り出す側と、受け取る側の絶妙なバランスに
よって成り立つのです。


 









最終更新日  2004年08月05日 09時17分23秒
2004年08月04日
カテゴリ:手形法


手形は形式さえ満たしていれば必ずお金が支払われるように
しなくてはならない、と昨日申し上げました。
そこで、その満たさねばならない形式とはなんでしょう。
そこで、手形法の条文を見ましょう。

第七十五条  約束手形ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一  証券ノ文言中ニ其ノ証券ノ作成ニ用フル語ヲ以テ記載スル約束手形ナルコトヲ示ス文字
二  一定ノ金額ヲ支払フベキ旨ノ単純ナル約束
三  満期ノ表示
四  支払ヲ為スベキ地ノ表示
五  支払ヲ受ケ又ハ之ヲ受クル者ヲ指図スル者ノ名称
六  手形ヲ振出ス日及地ノ表示
七  手形ヲ振出ス者(振出人)ノ署名

これが書かれていれば手形として認められ、逆に書かれていないと法律上手形とは認められません。
これを「必要的記載事項」と言います。

では、これ以外のことを書いたらどうなるのでしょう。
まず、書くと手形が無効になってしまう事柄があります。
これを「有害的記載事項」と言います。
抽象的には手形に書かれたお金の支払の信用性を失わせる事柄をいい、例えば「もし、○○を手に入れたら支払ます」とか「分割払いします」とか言う記載をいいます。

次に、書いても無効にはならないが、無意味なものとして
扱われる事柄があります。
これを「無益的記載事項」と言います。
抽象的には、手形として当然のことなので書いても意味が無い事柄を言います。
例えば、「手形と引き換えに支払います」とか「手形を呈示(提示)すれば支払ます」とかいう事柄です。
これらは手形法で定められているので
わざわざ書かなくてもいいのです。

第三十八条
確定日払、日附後定期払又ハ一覧後定期払ノ約束手形ノ所持人ハ
支払ヲ為スベキ日又ハ之ニ次グ二取引日内ニ支払ノ為手形ヲ呈示スルコトヲ要ス
○2 手形交換所ニ於ケル約束手形ノ呈示ハ支払ノ為ノ呈示タル効力ヲ有ス
(引用注・「為替手形」を「約束手形」に置き換えて記載。以下同じ)

第三十九条
約束手形ノ支払人ハ支払ヲ為スニ当リ所持人ニ対シ手形ニ受取ヲ証スル記載ヲ
為シテ之ヲ交付スベキコトヲ請求スルコトヲ得

そして、最後に書いても無効にならず、書いた事柄通りの効果が
発生する事柄もあります。
これを「有益的記載事項」と言います。
抽象的には手形に書かれたお金の支払の信用性を失わせる事柄でなく、法律上当然に定められているわけではない事柄を言います。
例えば、利息の記載です。

第五条
 一覧払又ハ一覧後定期払ノ約束手形ニ於テハ振出人ハ
手形金額ニ付利息ヲ生ズベキ旨ノ約定ヲ記載スルコトヲ得
其ノ他ノ約束手形ニ於テハ此ノ約定ノ記載ハ之ヲ為サザルモノト看做ス

以上が手形の要件にまつわるお話です。
では、手形は要件さえ記載すれば権利が発生するのでしょうか。
それについてはまた明日。






最終更新日  2004年08月04日 08時27分56秒

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