マックス爺のエッセイ風日記

2012/02/15(水)04:32

マックス爺の不整脈入院記(3)

健康(155)

≪ 同室者 ≫  同じような怒りを処方箋薬局でも経験したことがある。中堅どころの薬剤師が、やはり人を馬鹿にしたような口調で応答したことがあった。怒りがこみ上げ、「普通の言葉で話してくれ」と言ったら、彼女は私の剣幕に驚いて謝った。そんなことを指摘されたことが無かったのだろう。私は一連の内容を葉書に記し、薬局の本部へ送付した。あの薬剤師も今回の看護師も中堅職員。プロフェッショナルな職業柄、つい本音が出たのだろう。  怒りの対象であるその看護師に、下腹部を曝す。明日の手術に備えての剃毛で、私は初めての経験だった。職業とは言え、剃る方のW看護師にとっても嫌な気分だと思う。だが右肩と右の鼠径部(股の付け根)の2か所からカテーテルを心臓まで差し込み、不整脈の根源を焼き切る手術のため、治療上欠かせない「儀式」なのだ。  次いで胸に「長時間心電図装置」を取りつけ、腕にはヘパリンナトリウムの点滴。これは血栓が生じないよう血液をサラサラにする薬みたい。それらが終わったころ師長が挨拶に来た。これは珍しい。まるで旅館の女将と驚いていたら、彼女は同室者にお礼を述べた。どうやらお菓子などをナースステーションに届けたみたいだ。ははあ、だから私への対応とは違っていたのかと納得。でも私は金品を届ける気持ちは毛頭ない。そんなことで態度を変える方がおかしいのだ。  さらに師長は言う。「急患が入ったため病室が塞がってしまって済みません」。この部屋は本来「処置室」の由。それで電話はあってもロッカーがなかった訳だ。私は窓際の使用していない暖房装置の上に、必要な荷物を広げた。ロッカーがないのだから、これで許してもらおう。やがて室内に物凄い音。同室者がベッドに横たわるなり眠り始めたのだ。  轟音は彼が放ついびき。何せ巨体なので音も強烈。さっきまでIフォーンの画面を眺めていた彼が、今はまるで猛獣に変身している。彼が不整脈の2度目の手術であることは、先月の外来時に知った。だから何もかも慣れていて、手術前日の緊張もないのだろう。だが私は何故か嫌な予感がしていた。  向かいの病室からは「手術が不安だ」とか「タバコが吸いたい」と声が聞こえる。この人も同じ不整脈で明日は2番目の手術。いびきの主がトップバッターで、私が最後と決まった。手術に備え指輪を外して財布に入れた。手術では高電圧で患部を焼き切るため、金属を身に着けないよう申し渡されていた。準備が一段落した後は極力読書に没頭。  窓の外にはT大の医学部が見える。私が勤務した50年前は附属病院の本館も含め、ドイツのゲッチンゲン大学医学部の建物を模した明治時代の木造建築だった。先日亡くなった作家の北杜夫もそこで学んだ。それが立派な高層建築群に変わっている。その奥にはかつて精神神経科の「独房」があり、さらに私達が学んだ高校があった。今はそれらの全てが消え去り、まるで新しい街になっている。  夕食のメニューはカレイの煮物、野菜の煮物、白菜のお浸し、そしてアラメ(海藻)の味噌汁。どれも薄味で、ご飯はいつもの半分ほどの量。6時半ごろ自宅に電話し、妻に明日の手術の順番を教える。最初に「俺だけど」と告げたら、妻は「オレオレ詐欺」と間違え、「どなた様ですか?」と聞いた。子供の声は絶対忘れないのに、自分の夫の声を簡単に忘れるものだろうか。<続く>

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る