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マックス爺のエッセイ風日記

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2019.12.14
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カテゴリ:日本史全般
~出雲王国と出雲大社 その1~

  

 出雲には「神在月」と言うのがある。旧歴10月は「神無月」。なぜ日本の他の地方では神無月なのに、出雲だけが神在月なのか、私は不思議でしょうがなかった。 

  
   <東の十九社:文字通り19の小社が連結し、神様が住まう長屋のようだ。>

 神無月と言うのは、神様が出雲に出かけていなくなるからだとか。一方全国から神が集まる出雲では神在月。その期間、神様が一時的に泊まるのがこの十九社とされている。

  
       <西の十九社>

 十九社は境内の西側にもある。現代ならさしづめ「シェアハウス」だろうか。東西合わせて38になるが、果たしてこれだけで全国から来られた神々を収容し切れるのかと心配。

       

 おやおや、38柱だけじゃないねえ。何せ八百万(やおよろず)の神々。到底泊まれるわけがない。と言うか、こんな考えが出来たのは中世以降とのこと。水無月(みなづき=旧暦6月の別称)も本来なら梅雨の季節だから「水無」とは書かない。「な」は「の」の意味だった由。つまり水の月。それなら梅雨そのものだ。

 同じ理由で神無月は「神の月」。でもそれでは解決しない。神の月の本来の意味は何だったのだろう。神様はやはり出雲へ集まったのだろうか。では一体何のために。しょんぼり?

  

 さて、境内にこんな絵があった。私はこれが何か、直ぐに何か分かった。高さ48mほどの巨大な神殿。これが古代の出雲大社なのだ。なぜこんなものがと、疑うのが普通。だが「口遊」(くちずさみ)と言う古謡に次のようなものがある。「雲太、和二、京三」。意味は出雲大社が一番大きく、二番目が大和(奈良)東大寺の大仏殿、三番目に大きいのが京都御所の大極殿と言う訳だ。坂東太郎(利根川)、筑紫次郎(筑後川)、四国三郎(吉野川)と良く似た発想だ。

              

 今から19年前、工事中の境内から古い柱が出土した。銅の輪で括られた3本の柱は丈夫な栗材で、太さから推定すると高さは40m以上と考えられた。古い柱の出土で、あの「口遊」の伝承が本当だったことが分かった。

   

 真っ先に現地ガイドに「どこにあるか」と私が聞いたのがこの柱だった。「埋めたのでない」と彼女。だがそれが嘘であることは知っていた。そんな貴重なものを全部埋めることはないはず。日本の古代史と考古学に関心を寄せる私は、40年近くその分野の専門書を読んでいた。看板(左)には宝物殿で展示しているとあるではないか。ほら、やっぱりね。

     
      <発掘地点を示す標識。3本合わせた柱の太さが分かるだろう。>

 こんな丈夫な柱を3本銅の帯で括って建てた神殿の高さが48mほど。よくも古代にそんな土木技術があったものだ。発掘された古い柱は、確か鎌倉時代のものだったはず。さて古代の神話は、記紀より「出雲国風土記」に詳しい。この柱があの「国譲り神話」とリンクしていると聞いたら驚くはず。天つ神つまり大和に「出雲を譲る代わり、立派な神殿を建てて私を祀れ」と大国主命が言ったと言うのだ。

  

 そしてこれが柱の配置図。全部で9本(3本まとめたのが)だから、内部の部屋は4つしかないことになる。祭神の大国主は右の奥(上)に鎮座しており、正面からは見えない。そして神殿に昇る階段は西の海岸に向かっている。つまり祭神も西を向いているわけだ。これは一体何を表すのか。出雲族は西から来たか、あるいは海人族と強い同盟関係があったと言えないだろうか。

      

 絵を左右反転すると左が西で、階段の昇り口は引佐の浜。神々つまり出雲王国の同盟者は船でこの地へ来たと言うことだろう。九州の宗像氏、九州を起源とする安曇氏、丹後の籠神社を守る海部氏たち。彼らとこの出雲は海運を通じて深く結ばれていた。そして広範囲の交流で得た富を、大和王権が欲しがった。だからこそ国譲りを迫ったのが真実なのではないのか。大国主命は言う。「譲りましょう。でもその代わりに立派な神殿を建て、私を祀ってください」と。だがそれに従わない者が出雲族にいた。<続く>  

ノートえんぴつ 巨大神殿は3度建て替えられたと聞く。神殿が現在の規模になったのは出雲族の勢力が衰え、資材入手が困難になったためかも知れない。発掘された古い柱がもう一組「島根県立古代出雲歴史博物館」にもあることが、帰宅後に分かった。現地ガイドは何であんな嘘をついたのだろう。考古学ファンを甘く見てはいけない。





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Last updated  2019.12.14 00:00:19
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