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マックス爺のエッセイ風日記

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2020.06.10
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カテゴリ:人生論
~通夜と葬儀を終えて~

    ナツシラギク

 6月8日も兄の死に関する俳句を載せたが、あれはまだ通夜や葬儀を行う前に兄の訃報を聞いて詠んだ想像上の句だった。俳句、短歌、詩など文学に関心を寄せている者にとっては、常にイメージを言葉に置き換える訓練を積んでいると言っても良く、想像でもそれなりに作品を生み出すことは出来るものだ。今回は実際に式典に参列しての思いを句にしたもの。さてどれだけの違いが出るか。

          

 夏の礼服を出した。冬物に比べて生地が薄い分、幾らかは涼しく感じる。ワイシャツを着るのも、ネクタイを締めるのも、革靴を履くのも久しぶりのことだ。通夜の会場に着いてビックリ。兄の遺影があまりにも頬がこけたものだったからだ。そして棺に安置された兄と対面。最後は食べ物を摂れなかったせいか、やはり病気の老人の顔になっていた。口を結び無言の兄に合掌し、冥福を祈った。

   頬こけし兄の遺影や百合の花   百合は夏の季語

   眼閉じ百合手向けらる兄の黙  *まなこ *たむけ *もだ=沈黙

   遺影胸に揺るる車内や不如帰  *ほととぎす=夏の季語

 火葬場に向かう霊柩車に兄の遺影を抱いて乗った。遺影を持つのも、霊柩車に乗ったのも初めての経験だった。鬱蒼とした森を過ぎて火葬場に到着。

           

 兄の遺体が焼き上がるまでの間、控室で待っていた。コロナ対策上廊下の窓も部屋の扉も開かれ、通気を良くしてあった。待合室から帰って来た姪が、ツバメが窓から入って来て館内を飛んでいたと言う。先日は飛ぶツバメと兄の死を句を詠んだが、あれが本当のことになった。アナウンスで呼ばれ焼き場に向かった。まだかなり熱い兄の遺骨を竹の箸で拾い集めた。

           焼き了へし骨の熱さや燕飛ぶ   *おえ *つばめ=夏の季語

           厳かや月に輝く釈迦の骨   高野山の塔頭でみた仏舎利を思い出して

  

 病気のために姪(兄の長女)は通夜にも葬儀にも参列出来ず、代わりにその婿が出た。その彼も仕事のために現場に行くとかで、火葬場には向かわずに新潟のダムへ行った。大学院で地学を専攻した由。

      通夜の膳姪来ざるまま百合の花

      走り梅雨姪の一人は病にて

      

 火葬場から葬祭会館に向かう帰路は、焼き終えたばかりの遺骨を私が持った。骨自体は軽いのだが、骨壺が案外重たくて、女性は無理と喪主の兄嫁から委託されたのだ。

       白骨となりし兄なりえごの花   エゴの花が夏の季語

     ホトトギス

 葬祭会館から最寄りの地下鉄の駅まで歩き、そこから終点まで地下鉄に乗った。前日もこの日の朝もタクシーだったが、まさか地下鉄の駅に近かったとは。敬老パスも使えるため安上がり。終点から自宅まで歩いて帰る山道でホトトギスの鳴き声が聞こえた。漢字だと不如帰、時鳥、杜鵑などと書くこの鳥は渡り鳥。深い森に棲み、夜中などにも独特の鳴き声が聞こえて来る。

 鳴いて血を吐くホトトギスと言われるが、さほど鳴き声が煩いと感じたことはない。むしろ「てっぺんかけたか」とも聞こえる、キェッキェッキェキェキェキェが懐かしい。岩手県の100kmレース中に、お暗い森の中で何度か鳴き声を聞いたことがあり、自宅付近でも夜中に聞いた。

        手に重き兄の遺骨や不如帰

        時鳥弔ひ終へし杜の道   *とむらい

          

 自宅付近まで坂を下ると、あるお宅の庭にホタルブクロ(蛍袋)の花が咲いていた。これも夏の季語。これを用いてどう詠もうか。

         逝く兄や蛍袋の涙雨   

 革靴で坂道を下ったせいか、翌朝は足が奇妙に痛んだ。まだ疲れが残ってはいたが、このところの高温で茂った庭の雑草が気になって、草取りをした。そして午前中にスーパー2か所で食料品の買い出し。これでまた新たな一週間が始まる。礼服をハンガーに吊してクローゼットに収納した。





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Last updated  2020.06.10 08:21:28
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