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マックス爺のエッセイ風日記

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2021.03.07
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カテゴリ:文化論
~本物であること。真実であることの大切さ~

  

 ウポポイの敷地の一角に何棟かのチセ(アイヌの小屋)が建てられている。これがとても巨大なもので、窓はアルミサッシ、床は一面のフロ―リング、そして要所要所にコンセントが設けられているそうだ。すっかり近代化したアイヌの小屋だが、せめて一つぐらいは「本物」を建てられなかったのだろうか。博物館は「真実」を伝えるべき機関だし、そこに展示される物は全てが「本物」であるべきだと私は思う。

 もちろん不特定多数の観客が利用する施設なので、安全安心である必要がある。きっと新造のチセもそう言った点が重視されたのだと思う。だが国立アイヌ博物館と銘打つからには「真実」であり、「本物」であるのが絶対の条件のように思う。

          

 ネットで探した本物のチセの画像がこれ。全てのチセを本物にするのが難しいとしたら、せめて1棟くらいは本物を博物館の屋内に再現して欲しかったと思う。屋内なら風雨に曝されることもなく、屋外よりは建物も長持ちするはずだ。ウポポイが「精神文化尊重機能」を基本精神の一つに謳うのであれば、当然のことだし、「調査研究機能」や「情報発信機能」も偽物でどう研究し、どう発信するのだろう。

  

 アイヌの民族衣装に「アットウシ」と言うのがある。私は「青森県立郷土館」や「五所川原市立博物館」でその本物に接したことがある。どちらもかつての「北前船」で北海道から青森県にもたらされたものだ。だがウポポイの展示品のほとんどは開館に合わせて新しく作ったものと聞く。だから生活感がないのだろうし、アイヌの精神や芸術性が正しく伝わらないのではないかと危惧する。

   

 衣服の素材となる繊維はシナノキやオヒョウの内皮を剥いで晒し、細く割いて繊維にする。ところがそれに適した樹木がもう北海道では少ないそうだ。また染色の紺色は普通は藍(あい)を使うが、北海道では藍は産しないし、気温が低いために発酵しない。従って他の植物を使って染色せざるを得ないが、近年ではそれも困難だろうし、化学染料のお世話になるか、他県の藍を使うしかないと思われる。

   

 茶色の染料にはクルミ(胡桃)を用いると聞いたことがある。実が実る頃になるとこの皮がこげ茶色になる。クルミなら北海道でも入手しやすいのではないか。

    

 10年ほど前に北海道に旅し、大沼公園の周囲を走っていた。その時道路わきに小さな説明版が立ってるのに気づいた。それを読むと植物はウバユリ(左)で、アイヌはその球根を好んで食用にしたとあった。ゆり根は高給な食材だし、採集生活を送っていたアイヌが豊富に自生するウバユリやギョウジャニンニクを利用しない手はないだろう。函館の志海苔館(しのりたて)と言い、この旅ではアイヌにまつわる知識を得た貴重な体験だった。

 さてアイヌの工芸品として名高い鮭を咥えた木彫りの熊だが、あれが元々伝統的なアイヌの工芸だったわけではない。鮭が遡上する川や野生動物が生息する山野を明治以降になってから和人に奪われたアイヌの生きる術が、観光客相手に土産物としての木彫りを生業にしたのだ。こうして木彫りの工芸品はアイヌの「伝統工芸」と化して行った。<続く>





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Last updated  2021.03.07 00:00:10
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