007496 ランダム
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形成外科

きっと、私のパパへ問いかける声がこの部屋まで届いていたんだろう。
若い先生はクスクス笑っていた。
が、息子の顔を見るなり
さっと真剣な顔に戻った。

診察室に入ると、パソコンと診察ベッド・カメラとマイクが置かれた一室だった。

ドアで4部屋ほどに区切られているが、どうやら長い長い一室で壁こそあるが奥の通路で移動ができるんだろうと思う。

私が通っていた産婦人科がそうだったから。



"息子さん、どうされましたか?"
この問いに生まれたときの様子から始終を話した。

息子は生まれた時、泣き声に微妙にリコーダーのような
細い高い音があった。
喘息の発作のような・・・そんな感じの音が混じっていたのだ。

"泣かせたら・・・怒りますよね?"

医師の突然のこの問いになんだか気持ちがふと楽になった。


この人、どれだけ必要な情報であったとしても人に物事を強要しないんだろうな。
プライベートでも。
そう思った。



"あの、写真とりたいのでベッドに寝かせてもらえますか?"

うたた寝している息子をベッドに寝かせると
一瞬にして先生の希望がかなった。

"ん~、そうですね。なにかに圧迫されたような空気がもれるような音ですね。
あ、そうそう。母子手帳見せていただけますか?"

出生時の身長やら体重やらをつらつらと写し書きしているようだ。

"向かいの診察室に医師がおりますのでそちらに移動してください。ご案内します。"



開かれたドアをくぐると、そこにはこじんまりとした、優しそうで知的に見える先生が座っていて(実際見た目通りの先生だったのですが)、
その先生をサポートするかのように若めな先生が4人くらい脇に座っていた。


カメラマン(さっきの若い先生をいつしかこう呼ぶようになった)が
カルテに記入した内容をこじんまりとした先生が確認する。
不足した事項などは新たに質問されそこに追記される。

何を聞かれたのか正確には覚えていないのだけれど

"食欲はどうですか?"
とかそんな感じだったと思う。


その作業が終わると
"エコーで診てましょう。"
というなり隣の部屋へ移動。
息子を寝かせる。

先生は慣れた手つきで要点をしぼるかのように手を動かし
画像を注意深く観察しながら
パソコンへ転送するよう、カメラマンに指示していた。
O総合病院ではエコーをとるのに眠たくなる薬を飲まされていた。
それなのにここでは・・・もうお仕舞いですか?
そんな感じだった。



しばらく沈黙が続いた。

空中に酸素がないような気がした。
苦しかった。





"ん~。急に大きくなってきたんですね?エコーで診る限り、この塊は未分化なんです。
未分化というのは、骨になりたいのか肉になりたいのか、目標をもっていない細胞でちょっとやっかいなんですね。奇形とは違います。
早く検査したほうがいいと思いますが入院は完全予約制ですので、ベッドが空き次第こちらからご連絡します。"





やっかい・・・ちょっとやっかい・・・やっかいやっかい・・・。


そうか。どうりでネットで調べてもちんぷんかんぷんだよな。
症状がまったく違う。
ネットで調べた病気は大概、局部に痛みを伴うとあったが
息子は違うのだ。
押そうがつまもうが・・・力なく笑っているんだ。





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