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カテゴリ:惚れ薬
樋津家の財政は領地で穫れる米の売買で成り立っていました。 しかし米は天候に左右される作物です。 天災によって不作となるなど年ごとの出来も違って来、必ず しも安定した収入になるとは限りません。 樋津家の領地の内、西国にある雁戸村にはハゼの木が数多く 生えています。 秋になれば美しく紅葉するハゼの木ですが、その果実はアク 抜きすれば食べられるのです。 ある時若かりし孫左衛門は飢饉に備えて植えられていたハゼ の木に、他の使い道があることを偶然に知りました。 ハゼの実から穫れる蝋(ロウ)でロウソクが出来る・・・ 当時、照明に使われていたのは行灯(アンドン)です。 その行灯に使うのが菜種油ですが、庶民には最も安価な魚油 が重宝されていました。 照明の中でもひときわ明るいロウソクはとても高価なもので その原料も、当然大きな金額になります。 幼い頃に訪れた雁戸村の美しく紅葉したハゼの木を思い浮か べた孫左衛門は、これを試さない手はない、とひそかに決意 するのです。 ハゼの実の種子は飴色をしている為に狐の小判とも呼ばれて いるのですが、その思いつきが成功すれば 『雁戸村の狐の小判が樋津家の小判に化けるやもしれぬ』 まだ家督を継ぐ前の若き孫左衛門は大いに発奮しました。 ・・・・・・・惚れ薬(六十二)四日め にほんブログ村ランキング参加中 応援のクリックは一人一日一回のみ有効です。 このお話し、こちらが第一話めとなっております。 途切れることなく続けてご覧になれます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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