植物の力涼しい風が吹きはじめ秋が訪れると、葉の緑の色がやわらぎ、初夏に花をつけたハーブが控えめにまた咲きはじめ、秋らしい落ち着いた表情を見せてきます。秋はハーブの植え替えや挿し木、種類によっては種まきにも適した季節。夏に大きく成長して根が広がりすぎたハーブを掘りあげて根を整理するのにもいい時期です。 ハーブにとってはもちろん、育てている側にしても涼しくなると庭仕事も気持ちよくできて、お庭の模様替えにはぴったりの季節です。 ハーブは香りがよいので、決められたスペースの中に何をどこに植えても「ハーブガーデン」になりますが、少し本格的にしてみたい、または何を植えたらいいのかわからないというときには、まずテーマを決めてみましょう。 料理に使いたい、お風呂に入れたい、ハーブティーで楽しみたいなど、どういう使い方をしたいのかをまず考えてみて、その使い方にふさわしいハーブ、自分の好きな香りのハーブを選びます。そして育てやすさを考えてみます。そうやっていくとだんだんイメージがまとまってくるでしょう。 例えば、料理用とお風呂用、など2つのテーマで植えたいときは、決められたスペースを半分にわけて植えてみます。何種類かをどう植えるかですが、背の高低、それぞれのハーブが好む環境を考えます。 ハーブによって、酸性の土質を嫌うものには土に石灰を混ぜてみたり、水はけを好むものは少し高く土を盛り上げて植えたり、ちょっとしたことですが、ハーブの生育具合が変わってきます。 ◆◇◆小さなハーブガーデン設計のためのテーマとハーブ◆◇◆ *秋から冬にかけて育つハーブ。ただし、真冬は室内にとりいれた方がよいものもあります。(「ハーブ図鑑」参照) アップルミント ●ハーブティーガーデン お茶の時間を楽しむためのさわやかな香りのハーブ。時には薬効を期待するためのハーブ。 ミント類(ペパーミント、スペアミント、アップルミント、クールミント)、レモンの香りのハーブ(レモンバーベナ、レモンタイム、レモンバーム)、ローズマリー、セージ、コモンタイム など ローレル ●キッチンハーブガーデン 料理に使えるポピュラーなハーブ類。風味づけやドレッシングなどに刻んでスパイスのようにアクセントに使うハーブなど。 ローズマリー、タイム、マジョラム、オレガノ、セージ、パセリ、ウィンターセボリー、タラゴン、ローレル など イタリアンパセリ ●サラダハーブガーデン 葉がやわらかく、葉野菜と一緒にサラダにいれても食べやすいハーブ。 ロケット、サラダバーネット、イタリアンパセリ、チャービル、チャイブ、ナスタチウム、フェンネル など セージ ●メディカルハーブガーデン ハーブティー(侵出液)やリキュール(薬用酒)など飲食用で使うハーブ。ハーブチンキのように外用で使うハーブ。薬効が高いもの。 ローズマリー、ラベンダー、タイム、セージ、ローズゼラニウム、カモミール、レモンバーム、ポットマリーゴールド など ポットマリーゴールド ●バスハーブガーデン 香りのよいハーブ。肌に働きかける、体を温めるなど薬効の強いハーブ。 ゼラニウム類(ローズゼラニウム、レモンゼラニウム、ライムゼラニウム、ナツメグゼラニウム、シナモンゼラニウムなど)、ミント類(ペパーミント、スペアミント、オーデコロンミント、アップルミントなど)、ローズマリー、ラベンダー、タイム、レモンバーベナ、ポットマリーゴールド など ローズゼラニウム ●フレグラント&スウィーツハーブガーデン はなやかな香りのハーブ。部屋に飾るだけでもいい香りの漂うハーブ。甘い香りはデザートや焼き菓子にも合う。 カモミール、ローズゼラニウム、ラベンダー、ローズマリー、レモンバーベナ、レモンバーム、ミント類(ペパーミント、スペアミント、クールミント、アップルミントなど) ヘリオトロープ ●チャイルドハーブガーデン 香りの楽しいハーブ。フルーツの香りのものや甘い香りのもの。そして産毛があるような触って気持ち良いもの。 アップルミント、レモンバーム、レモンバーベナ、レモンタイム、パイナップルセージ、カモミール、ラムズイヤー、ヘリオトロープ など いかがでしょう。楽しくハーブの庭が設計できそうではないでしょうか。お庭がなくても大丈夫です。小さなベランダでも応用が効きます。単品のハーブで鉢植えにしたものをテーマごとにわけて配置してみたり、テーマごとの大きなプランターを用意し、間隔をあけて寄せ植えにしてみてはいかがでしょうか。 タンポポ 北海道から沖縄まで、日本全国に自生するキク科の多年草で、地中に茶褐色のゴボウのような根をもち、地下50cmに達するものもあります。 葉は根もとに集まり、長さ10~15cm、花茎は直上し、15~30cmに達し、黄色または白色の花を咲かせます。 都市部の大部分と農村の集落付近に見られるのは帰化種の西洋タンポポがほとんどです。このほか、在来種がありますがどれも食べられます。昔は野菜のように食用にされたそうですが、今では多くのくせのない野菜が出まわったため、苦みのあるタンポポは食べなくなったようです。 *タンポポという名は、可愛らしく、親しみやすく、どこにでもあって、こんなに人に知られている野草は、洋の東西を問わずあまりないと思います。花茎を集めて〈レイ〉を作ったり、真綿のように白くなった種の穂を吹いて遊んだり、私たちに春の喜びを抱かせてくれる野草でもあります。 《薬効》 軽い苦みは、健胃および、利尿作用として働きます。 ビタミンB1・A・C・クロロフィル・鉄などの補給作用があり、貧血の予防治療作用に役立ちます。 母乳の分泌を促進、解熱・発汗作用。青汁として飲むと、浄血作用があります。 このほか、リノール酸を含んでいるので、脱コレステロール作用もあり、血液を浄化し、血管の硬化を防ぎます。 つくし 「つくし誰の子、すぎなの子」といいますが、つくしが成長してすぎなに変わるわけではありません。同じ地下茎から出ていても、つくしは胞子をまく繁殖の係、すぎなは栄養をつくって蓄える栄養の係で、親子より兄弟姉妹といったところです。 《薬効》 トクサ科の多年草で、脂肪、たんぱく質、リン、カルシウム、マグネシウム、鉄、ビタミンA・C、カロチン、けい酸などのほか、特殊栄養成分としてサポニンが含まれ、昔からおもに、つくしは食用、すぎなは薬用に利用されていました。5月~10月に、すぎなを摘んで水洗いし、カラリと日干ししてすぎな茶に。一日に、5~10gを300ccの水で・量まで煎じて飲めば、利尿、解熱、せき止めなどの効果があります。また、ひとつかみほど鍋に入れて沸騰させた湯を、お風呂に加えると、皮膚病によいすぎな風呂に。しかし、つくし、すぎなとも、ビタミンB1分解酵素を含むので、多食は避けたほうが無難。でも、この酵素は干したり十分過熱したりすれば、働かなくなります。 ■タンポポを食べる ~花、葉、根すべてが食べられます~ タンポポの若葉を摘み取ってマヨネーズかドレッシングをかけると、それだけで野趣あふれるサラダとなります。タンポポの若葉が得られるのは、春とは限りません。季節を問わずに採れます。 ☆きんぴら 〈材料〉タンポポの根、白ごま、しょうゆ、油、塩 【作り方】 タンポポの根は古いほどよく、5年以上経ったものは、ごぼうのように太く長くなっています。ただ、ごぼうより柔らかいので、そのままでは引き抜けず、途中で切れてしまいますからスコップなどで掘り取るようにします。 ・細い千切りにしてきんぴらごぼうのように油で炒め、塩・しょうゆで味つけする。味つけはみそでもOK ・仕上がりに炒ったごまをふる。 *味つけを濃いめにして佃煮のように料理すると保存が効くので、たくさん作っておくのも後でとても重宝です。 ☆ごまあえ まだ花の咲かない前のほうがおいしい! ・タンポポの葉は、塩を加えた熱湯にさっとくぐらせ、水に通す。 ・ごまみそは、白ごまを炒ってすりつぶし、みそを入れてよく混ぜる。最後にハチミツを加える。 ・ゆでたタンポポの葉に・のみそをかけて食べる。 *タンポポの葉は、この他に酢みそ和え、煮浸し、おひたし、てんぷらなどいろいろな料理法があります。試してください。 ☆タンポポコーヒーを飲む タンポポの根は、健胃、利尿、催乳、浄血、胆のう、肝臓に薬効があるとされています。 タンポポの根を集めるとタンポポコーヒーができます。根は、ごぼうのような根なので非常に掘りにくいですが、なるべく長く掘ってみましょう。 掘り集めた根は、きれいに洗ってから3センチくらいの長さに切って、2~3日天日で乾燥します。乾燥したらフライパンでこんがりと炒ってからミキサーで粉末にします。 飲み方はふつうのコーヒーと同じですが、手づくりの野性の味を楽しむために、フィルターでこしたりしないで、そのままコップに入れて熱湯を加えるのがよいでしょう。上澄みを飲み、コップの底に残った不溶性のかすは最後に捨てます。 ■ツクシを食べる ツクシは日当たりのよい土手や田畑のあぜ道などに生えるシダ植物のスギナの胞子茎です。節間が短く、茎が太くて充実したものを摘み取ってきます。頭をつけたままハカマを取って、さっとゆで冷水に取ります。こうしてあらかじめ湯に通しておくと、天ぷらにするときの時間短縮にもなるし、食べやすくもなります。ゆでたものを、油炒めや卵とじ、しょうゆ煮、つくだ煮などにします。だし汁、しょうゆ、みりんで煮た後、炊きあがったご飯に混ぜれば〈つくしご飯〉のできあがり。 〈下ごしらえ〉 茎が太めで穂が堅くしまったものを根もとから摘みます。採取してから時間が経つと、どんどん穂が開いてくるので、すぐに下処理開始。 ・はかま取り 片手で茎を持ってゆっくり回しながら、もう一方の指ではかまを横にむしります。はかまを下へ引くと、茎がむけたり折れたりするので注意。 ・あく抜き たっぷりの水に10分ほど浸します。このようにすると、細かいホコリやゴミが落ち、苦みのもととなる胞子やアクが適度に抜けます。 ・ゆでる つくしをざるに上げ、塩(または酢)少々を加えた熱湯に入れ、さっとゆでます。ゆですぎないように手早く引き出します。 ・水にさらす すぐ、たっぷりの冷水にはなします。これでさらにアクが抜けます。天ぷら以外の料理は、これを絞って水気を切ったものを使います。 ・冷凍保存 40~50本に分け、絞って水気を切ります。平たく並べてラップで包むか密閉袋に入れ、採取月日を記入して冷凍庫へ。使うときは自然解凍に。 |