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こんばんは、吉田です。
ユウゾーのハナシの続きです。 突然、居場所がわからなくなったCBX400F乗りの親友……。 俺、そこまでアイツを怒らすようなこと、なんかしたっけかな!? 考えても考えても、思い当たる節はありませんでした。 こうなったら、函館の実家に聞いてみるしかない……。 そう思い、高校の卒業生名簿を引っ張り出しました。親元に電話して、家の人から彼の新住所を聞き出すことにはちょっとためらいもありましたが、しかたありません。 それまで、電話はおろか、会ったこともない彼の家族……。 怪しまれないだろうか? 昨今の“振り込め詐欺”ほどではないにしろ、電話による妙なセールスが増えていた時期でもありました。 ままよとばかりにダイヤルを回し、向こうの受話器が上がるのを待ちました。 ややしばらくして、女性が出ました。母親のようでした。 「あ、あの……、ユウゾー君と高校時代に同じ学年だった吉田と申しますが……」 「あっ、吉田君ね。ユウゾーからいろいろ聞いてますよ」 親しげな口調でそう言われ、意表を突かれた感じでした。 アイツ、いい年して親に自分のダチのことベラベラしゃべってんのか……。 少し呆れもしましたが、まあ、この際そんなことはどうでもいいわけです。向こうがこっちを知ってくれてることに安堵しました。 「あ、あの……、ユウゾー君、最近引っ越しましたよね? 転居先を聞いてなかったんですが、新しい電話番号を教えていただけませんか」 そう問いかけると、水を打ったような沈黙が流れました。最初に感じた“温かさ”とは明らかに温度差がありました。その静寂のなかに若干の拒絶のようなものを覚えました。 やはり何かあるんだ……。俺が気づいてない何かが……。 しじまに耐えられなくなり、「あ、あの……」と再度口にしかけたとき、向こうが先に切り出しました。 「吉田君は今、どこにいるの?」 「東京です」 「そう……」 そう言ったきり、またしても沈黙が……。ただ、何かを話そうとして葛藤している雰囲気を感じました。 「ユウゾーねぇ……。ユウゾーは……」 言いたくはないけど、言わなければ……という思いがひしひしと伝わってきました。僕は固唾をのんで、その先の言葉を待ちました。 「死んだんだから……」 <つづく> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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