2010/06/07(月)13:32
桜が咲くころ、思い出すこと 6
こんばんは、吉田です。
大変ご無沙汰しておりました……。
こんなに日を置いて書くのもどうかと思いますが、全うしたいと考えております。
例のハナシの続きです。
「ユウゾーは死んだんだから……」
そう言われた瞬間、頭の中が真っ白になりました。わきの下から横っ腹に冷たい汗が伝い、手のひらもびっしょりでした。
そこから先の記憶はあいまいです。
お悔やみの言葉を述べたはずですが、ほかに何を話し何を聞いてから受話器を置いたのか覚えてません……。電話を切った後も、彼の母親の号泣が耳にこだましていました。
葬式はすでに終わっていました(函館で行なわれました)。僕に連絡が来なかったのは、ユウゾーとの仲が高校時代の仲間内では知られていなかったためでしょう。
後日、方々から聞いた話を総合すると……。
その年の春、ゴールデンウイークにCBX400Fで里帰りするべく、東北自動車道を単身北上。途中、岩手の大学に進学した旧友の住まいに立ち寄った後は、国道を経由するルートで青森へ……。その途上、十和田湖のあたりで、前を行く大型トラックを追い抜こうとした際に転倒。投げ出された体が、追い越そうとしていた車両の下に潜り込むように入ってしまい、後輪に轢かれて即死……。
彼が亡くなった経緯はそのようなものでした。
当時はまだ東北道は全線開通していません。どのみち一般道を走らなければ、青森には行けなかったという事情がありました。そこに不運も重なりました。ユウゾーがトラックに追い抜きをかけたとき、前方には“右折車”が停止していたそうです。それに気づくのが遅かったのか……、それともその手前でオーバーテイクできると踏んだができなかったのか……。あるいは、何か別の原因があったのか……。
“真実”はわかりません。
北上する桜前線をおそらくはオーバーテイクした先で、彼がはかなくも散ってしまったこと……。はっきりしていたのは、その“事実”だけでした。皮肉なことに、あるじを失ったCBXはほとんどダメージを受けていなかったらしいです。
そうです……。
僕にとって「唯一無二の親友の死」。
動かしようのない厳然たる「事実」だけが深く横たわり、すぐにでも発進可能なCBXがたたずむのを尻目に、ユウゾーにいったんは抜かれたであろう桜前線は、そこを無情にも通過していきました。
<つづく> <了>