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椿荘日記

椿荘日記

「椿姫」名盤紹介

「(マリア・カラスの)「椿姫」はどれが良かったのでしょうか」、というご質問を、先達て頂きまして、良い機会ですので、今日はディスク紹介をさせて頂きたいと思います。

マリア・カラスの「椿姫」は、残念なことにレコード会社との契約トラブル等で、スタジオ録音は一つしか残されていず、従ってライブ録音が七つ、デイスクとして、販売されています。音質はモノラルが多いなどの理由で相対的に余り良くないのですが、音質の良さのみを売りにする他の録音からは、演奏、表現共に、相変わらず抜きん出ています。

と言うことで、お薦めしたいのが、1955年に5月28日に行われた、ジュリアーニ指揮、ミラノ・スカラ座管弦楽団、共演者は、アルフレードに、度々共に舞台に立ち、カラスが最も信頼し、死の前に行われたワールドツアーの連れでもあったデイ・ステファーノ、ジェルモンに名巧バステイアニーニ、演出はルキノ・ヴィスコンテイという素晴らしいスタッフで構成されたミラノ・スカラ座のライブ録音です。
イタリアの名指揮者セラフィンの薫陶を受け(カラスにヴィオレッタ役を最初に教授したのは彼でした)そしてこの公演で、オペラの演出も手掛け、定評のあった名映画監督ヴィスコンテイからその表現の深さや洗練を学び、その多大な影響は後年、カラス独自のヴィオレッタ像をくみあげていく上での重用なファクターとなっています。
その結果としての1959年ロイヤル・オペラ座(ロンドン)レッシーニョ指揮、共演者ヴァルレッテイ、ザナーシとの公演で遺憾なく発揮され、その役を確立した姿を今もその録音から聞き取ることができます。

録音、歌唱、共演者のコンデイション等から、1952年のメキシコ公演での録音(共演者デイ・ステファノ)と、特にアルフレード・クラウスとの共演で名高い1958年のリスボン公演、二つの録音は共に、名盤との呼び名が高いのですが、舞台としてのトータルで考えますと、ここでは敢えて上記の二つをお薦めしたいと思います。
余談ですが、ライブ録音になると終演後の拍手喝采が必ず入っていますが、公演中もその熱狂振りで驚かされるのは、ミラノ・スカラ座公演(カラスは何度もここで「椿姫」の舞台に立っています)です。ヴェルデイに対する国民的支持もさりながら、ヴィスコンテイ演出、マリア・カラスがタイトルロールのこの公演に対する熱狂的な支持の表れでしょう。
この公演以降、あるプリマを迎えるまでの長い間、スカラ座での「椿姫」は尽く不評で(あのフレーニでさえ~指揮はカラヤンでした~聴衆の余りに冷たい反応に泣き出して舞台から走り去る、というエピソードを持っています)、それは伝説にもなった、カラスの「椿姫」の残した大きな影響であると言えましょう。




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