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椿荘日記

椿荘日記

ウィーンとマリ(マリのウィーン遊興記)①

マリがまだまだ独り身を誇っていた(?)ときのことです。
掲示板などで折に触れ、ウイ―ン旅行につい書いた事を、覚えていらっしゃる方もいると思います。
最初は姉と共に、彼女の「コンパニオン?(通訳など、便宜を図ってくれるなら旅費を出す、とまで言うので)」として渡欧致しました。
その時はウイ―ンだけで無く、ミュンヘン、ザルツブルグ、ロンドンなど各都市を周遊するもので、タイトルは「音楽の旅」でしたから、オプションながら、毎晩オペラ鑑賞かコンサートが必ずあり、私達は一晩と空けず、極寒のヨーロッパの夜を劇場通いに明け暮れました。
すっかり気に入ってしまった姉妹は、じゃあ来年も必ず、と固い約束を交わしたのですが、翌年さあ申し込みましょうと言う時期に、姉がお見合いで急に婚約してしまい、翌春に控えた結婚準備に忙しいからとの裏切りの憂き目に会ったマリは、泣く泣く一人で行く破目に。
今回は念願のウイ―ン滞在(10日間)のみの旅でしたのに。

成田で待ち合わせたツアー一行は15人前後の、丁度いいと言えば丁度いい規模で、時期的なこともあって音大の女子学生の卒業旅行や、新郎新婦とも音大卒業生という新婚カップル、退官して間も無い元生物学教授、50年配の高校の女性教諭の二人連れ、調律士の中年の男性など、少し特徴のあるメンバーでした。

殿方を除き、単身参加はマリだけでしたので、やはり妙な具合なのか(部屋も当然一人部屋でしたので)常に遠巻きに見られているようで、少々違和感がありましたが、元より独りで行動するのが好きなほうでしたから、これ幸いとばかりに、プラター公園や中央墓地、シェ―ンブルン宮殿観光など、数少ない団体行動でも、迷惑が掛からない程度離れて動いていました(添乗員氏~若いお兄様でした~が妙に気にして、写真など、お願いもしていないのに撮ってくれるなどの涙ぐましい気の使いようでした。そう言えば、タレントの「野々村まこと」にそっくりでした)。

夜になれば必ず劇場に正装で突進し、お昼と言えばオプションの遠足(ザルツブルグ巡り、ノイシュヴァンシュタイン城見学など)にも行かず、もっぱらシュターツ・オーパー(国立オペラ劇場)がその威容を見せるケルントナー通りを散歩し、カフェ・ムゼウムでカフェ・ミット・ザーネを楽しんだり、分離派展示館や美術史博物館巡りをしていましたら、何故か音大生グル―プに嫌われてしまったようで、道ですれ違っても大仰に横を向かれ、ああ、成る程と思っただけなのですが、たまたま「こと」を目撃し、事態を重く見た、かの「野々村まこと氏」におろおろされましたので、大丈夫です、ご心配なくとやんわり、きっぱりと否定して差し上げました(たまたまツアーに同行しただけで、「お友達」ではありませんし)。

一生懸命コンパニオンとして働いて資金も潤沢にありましたので、お蔭でお買い物も沢山(ボッテガ・ベネタのバッグやエルメスのスカーフ、シャネルの靴とアクセサリー、プチ・ポアンのオペラバッグなど買いこんでいました)出来ましたし、万事がマイペースでしたので、集団でしか行動出来ないお嬢さん方の不興を買ったのでしょうね。
マリは一切お構い無しでしたので、相変わらず気を使って誘いにくる添乗員氏(旅行会社の「営業」もあるのでしょうが~苦笑)には少々頑なに映るほどはっきりとお断りし(意地を張っているわけではなく、前回で「観光」は殆ど済ませてしまったので)、鉄道を使って6区の「ユーゲント・シュテール」のアパルトマンを見に行ったり、小さな街の骨董屋でビスクドールを購入したり、蚤の市を歩きまわるなど、単独観光を慣行しておりました。

ある夕方、モーツアルトの「フィガロの結婚」の公演がこれからあるという時、お散歩から帰っって観劇の為に着替えようと慌しくホテルのロビーを横切ろうとしたマリの目に、浮かない顔で座り込んでいる、元生物学教授の姿が飛び込んできました。
訳を聞けば今回の旅行でうっかりネクタイを殆ど持って来ず、汚れてしまったので今夜の観劇の為、何処かで買いたいが、場所がわからないと言うのです。
マリはとっさにお土産用の、然程高くない、でもシックな柄の品を思いだし、丁度良いのを買ってあるので宜しければプレゼント致しましょうと申し出たところ、大変喜んで、こちらが顔を赤らめるくらい感謝されました。

さて、日程もあと半分、と言うところで、ある問題が起きてしまいました。



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