MA
長戸大幸増井千晶ミレニアム生態系評価とは国際連合の提唱によって2001年〜2005年に行われた地球規模の生態系に関する環境アセスメント。生態系・生態系サービスの変化が人間生活に与える影響を評価するため、それらの現状と動向・未来シナリオ作成・対策選択肢の展望について分析を行っている。ミレニアム・エコシステム・アセスメント、ミレニアム・エコシステム評価、地球生態系診断とも表記される。以下では主に略語MAの表記を用いる。2000年当時のアナン国連事務総長が国連総会で行った演説の趣旨に沿って、2001年6月よりMAが開始された。世界95カ国から約1,360人の専門家が参加し、日本からは国立環境研究所が参加した。MAの目的は、生態系の変化が人間生活に与える影響を評価すること、および「生態系の保全」・「持続的利用」・「生態系保全と持続的利用による人間生活の向上」に必要な選択肢を科学的に示すことにある。MAの利用法としては、政策決定者・民間団体・一般市民の行動の優先順位を決定するツールなどが想定されている。MAの結果は15の報告書に纏められている。MAプロジェクトは、地球上の生態系および生態系サービスの劣化が増大しており、その劣化がミレニアム開発目標達成への障害となっていること、未来の変化についてのシナリオによっては劣化がある程度回復できることを示した[7]。また、生態系の劣化を防ぐための対策選択肢の提示も行っている。MA予算は1,700万アメリカドルであり、物資による700万アメリカドル以上の出資と併せて、総額2,400万アメリカドル以上がMA遂行に使われた。それらは地球環境ファシリティ・世界銀行・UNEPなどから提供された。分析対象MAでは相互に作用する要因として次のものを取り上げて分析している。人間の福利(食糧などの基本物資・健康・安全・選択と行動の自由・良好な社会関係)生態系サービス(およびその基盤となる生物多様性)変化の要因 変化の間接的要因(人口・経済・社会政策・科学技術・文化および宗教) 変化の直接的要因(土地利用方法の変化・生物種の移入および絶滅・科学技術の使用・肥料や灌漑などの外部から導入・火山活動や進化など自然現象)長戸大幸増井千晶