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カテゴリ:ライトノベル
[設定/世界観]★★★★★ [文章/表現力]★★★★★ [総合/超主観]★★★★★ 今やライトノベルを代表する名作シリーズの記念すべき第1巻。第4回電撃ゲーム小説大賞<大賞>受賞、上遠野先生のデビュー作でもありますが、その完成度は驚異的。個人的には未だシリーズ中最も好きな作品だったりもします。 先日シリーズ最新刊「オルフェの方舟」が出たので、久々に最初から通しで読み返すことに。エンブリオあたりまでは新刊出るたびに通し読みしてたんですけどね・・・ お話は、「世界の敵」に反応して自動的に浮かび上がってくる「変身ヒーロー」ブギーポップと「人を喰うもの」を巡り、私立深陽学園で起きた奇妙な事件を、異なる5人の視点から描きます。それぞれの視点では事件の断片しか見えず、例えば第1話の竹田啓司君にとってはほろ苦い青春の一コマに過ぎませんが、事件の最終局面に立ち会った新刻敬さんにとっては、人食いの怪物や地球人の行く末を審査するため飛来した宇宙人などが錯綜する非現実的な怪事件に他なりません。(^^; どうやら宇宙から来たらしい「進化しすぎた男」と、その劣化コピーとして地球人の手で生み出された人食いの怪物マンティコアなどの怪人達を縦軸に、奇妙な事件の周辺でありふれた思春期の揺れる思いに翻弄される少年少女達を横軸にして、各話ごとに異なる時間軸により奇妙な物語が展開されます。 まぁ敢えて無理矢理単純化すれば「女子高生に擬態した人食いの怪物が退治される」話ということになりますが、恐ろしい事に物語のテーマはそうした道具立てとまったく関係ありません。「惚れっぽい女子高生の何気ない思いやりが地球を救った」話という方がまだ近いかも。f(^^; 見所はもう多すぎていちいち指摘もできませんが、個人的に一番好きなのが第1話、竹田啓司君とブギーポップの、生真面目で何となく共感を覚えてしまうやりとりです。何しろシリーズがかなり長くなった現在に至るまで、あのブギーポップと友情を育むという快挙を成し遂げたのは竹田君ただ一人。(^^; イントロダクションと間奏を伴う5話構成も素晴らしく、異なる時間、異なる視点から語られる断片が徐々に組み上がって緻密な物語を構成していきます。それでいて語り口は朴訥というか素朴というか、独特のシンプルな文体で嫌みが感じられません。キャラクター達のセリフもやはり素朴な風合いがあり、まぁ実際にこんなセリフをしゃべる高校生は今時いないと思いますが、物語にしっくり溶け合うので違和感は皆無です。 シリーズの軸になる「統和機構」等の名称はこの時点では未登場ですが、全編を通して物語を導くことになる架空の作家、霧間誠一氏の著作名は散見されます。中でも重要な「VSイマジネーター」が続く第2巻のタイトルになってるあたりもお見事。 ちなみに各話サブタイトル
からすると、同世代故の共感みたいなものを感じないでもありません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年05月06日 16時58分21秒
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