[富士見ミステリー文庫]麗しのシャーロットに捧ぐ - ヴァーテックテイルズ -/著:尾関 修一
[設定/世界観]★★★☆☆[文章/表現力]★★★★☆[総合(主観)]★★★☆☆あらすじに惹かれて買った富士見ヤングミステリー大賞佳作受賞作品。富士見ミステリー文庫はこれがお初です。物語はガス灯やら馬車やら使われてる近代ヨーロッパ風の架空世界で、帝都郊外の古色蒼然たるお屋敷を舞台とし、それぞれ数年の時を隔てて起きた3つの悲劇を通して人の愛憎と狂気を紡ぎ出します。微妙に内容をズラしながら繰り返し語られるモチーフは、人形しか愛せない夫、亡くした妻を蘇らせるための悪魔召喚、血塗られた日傘。そして、最愛の妻を亡くした夫や主への許されぬ想いを秘めるメイドなど、妄執故に壊れてゆく人々を貫くのは、「知識の探求者」にして「手を汚さぬ虐殺者」たる教主ヴァーテックの底知れぬ悪意・・・(-_-;と、このライトノベル系レーベルでは珍しい本格ゴシック小説です。語り口もしっかりしてて、ちょっと新人さんとは思えない筆力でした。特に構成がお見事で、各章で語られる3つの事件、間に挿入されてる「告白」3章、そして第2章で語られる日記の内容等が、微妙にズレながらオーバーラップ。互いに食い違う内容ながらモチーフや人物は共通し、しかもシャーロット、ミリアムなど女性達の名前が重ね合わされる上に、ミリアムの夫として描かれる男性は巧妙に名を伏せられてたりもします。全てを通じて登場する人物は嘘つきで、虚言を弄して読者まで翻弄してくれます。結果、ラストまで読まないと各エピソードの前後関係や人物の対応付けがわからない仕掛け。おかげで進んでは戻って詳細を照らし合わせ・・・と大忙しでした。f(^^;ただ、新人さんのデビュー作としては素晴らしい出来だけれども、この手の話だとついゴーメンガーストやアッシャー家なんかの重厚さを期待しちゃうので・・・ちょっと採点辛口かも?あと自分は怖いの苦手なので、全然怖くなかったのは個人的には助かったんですが。「ゴシックホラー」として売ってるんならどうなのかなぁ・・・(^^;