うたのおけいこ 短歌の領分

2010/08/19(木)16:06

森高千里 私がオバさんになっても

J-POPパラディーゾ(920)

森高千里(もりたか・ちさと) 私がオバさんになったら あなたはオジさんよ かっこいいことばかりいっても お腹がでてくるのよ 私がオバさんになっても 本当に変わらない? とても心配だわ あなたが 若い子が好きだから ■ 歌詞全文(著作権保護期間中) 作曲:斉藤英夫 平成4年(1992)6月リリース 註 もう18年も経ったのか。当時はこちらもまだまだ若かった。が、今では立派に「お腹のでたオジさん」になった。 先日たまたま聴いていたラジオから流れてきて、思わず耳を欹(そばだ)てた。 森高千里のリリック・メイカー(抒情詩づくり)としての才能が炸裂した快作である。 ・・・といっても、もちろん彼女はデビューした瞬間から上手かったのだが、この歌では特にバッチリ決まって、広くメジャーシーンで認知された感がある。 キレイ事を排した、真情溢るる本音の歌詞が鮮烈で、彼女の前にも後にも彼女はいないと思う。それ以前の「いわゆるアイドル」を自らパロディ化したような、知的でポストモダーンなイメージ戦略にも、当時瞠目させられた。 作中主体「私」は「あなた」が好きで好きでたまらない。だから心配で心配でたまらないという若い女性らしい素直な思いを、すごく日常的でありながら皮肉で屈折した、ちょっと“イジワルな”言い回しでコミカルに表現していて、あの一種独特の線の細い暗めの声質も相俟って、深い共感と微苦笑を誘われる。 歌詞に「水着」とか「ミニスカート」が出てくるから夏の歌かと思いきや、よく読んでみると必ずしもそうでもない。 やや大袈裟にいえば、もっとエヴァーグリーン(ときわ緑、常緑)な愛と永遠性とケア(配慮)を表現している。 徹底的に逆説的でありながら、全体から受ける印象は普遍的とさえいえるラヴソングの名曲になっている。 この曲は、ビートルズの歴史的名盤「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」(「ペッパー軍曹の孤独心倶楽部楽団」)に収められた「ホェン・アイム・シクスティーフォー」(「私が六十四歳になっても」)からタイトルや全体のコンセプトを得たことは疑いないと思うが、完全に換骨奪回されて、モリタカ不思議ワールドを構築し得ている、J-POP史上の名作。 サウンド面も、当時もそう思ったが、今聴いても完璧。 全然古びていないことに、改めて驚かされるほどだ。 この次のシングルが、あの正統派バラードの名曲「渡良瀬橋」であったというのも、彼女の多彩な才能を遺憾なく示している。ちなみに「渡良瀬橋」とは、当地栃木・足利市の渡良瀬川に架かる大きな橋である。その付近の緑溢れる爽やかな情景は僕も大好きである。 今では森高さんも、一般的にはオバさんと呼ばれる歳になったが、時折CMなどで垣間見る近影は、相変わらず本当にキレイでステキなオバさんである。悠々ストライクゾーン内である。 この秋、久石譲作曲の不二家「ペコちゃんの歌」で、11年ぶりに本格復帰するらしい。彼女の歌唱による「♪チョコレートは明治」のCMソングは最高だったが、今度はどうなるのだろう。 彼女の存在は、僕(ら)にとって全く別格官幣大社なので、すごく楽しみにしている。 なお、その後数千万人の若者たちに滂沱の悔し涙を搾らせた「デキ婚」劇であったが、相手があの男前・江口洋介では仕方がないだろう。もう許す(笑) ・・・今後とも、ステキな奥様を支えていってほしい。

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