2012/03/25(日)13:58
清少納言 枕草子 初段 「春はあけぼの」 現代語訳
清少納言(せいしょうなごん)
枕草子 初段
春は、あけぼの。
だんだん白んでゆく山際が少し明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいているの(が、すてき)。
夏は、夜。
月の出ている頃は言うまでもないわ。
闇夜もなおさらね。
蛍がたくさん飛び交っているの。
また、たった一匹二匹などがほのかにぼんやり光っていくのも、すてき。
雨なんかが降るのも、すてきね。
秋は、夕暮。
夕日が射して山の頂きに近づいたところへ、烏が寝床へ帰ろうと、三つ四つ、二つ三つなど急いで飛んで行くのさえ、しみじみする。
まして、雁なんかの連なったのが、とても小さく見えるのは、すごくすてき。
日が入り果てて、風の音、虫の音(ね)など、もう言葉では言い表わせないわ。
冬は、早朝。
雪が降ったのは、言葉にできないわ。
霜がとっても白いのも、またそうでなくても、すごく寒いので火など急いで熾(おこ)して、炭を持って(廊下などを)渡っていくのも、(冬の朝に)とってもはまっているわね。
昼になって、気温が暖かく緩んでくると、炭櫃(すびつ)、火桶の火も白い灰がちになって、カッコ悪い。
(拙訳)
【原文】
春は、あけぼの。
やうやう白くなりゆく山ぎは少し明りて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
夏は、夜。
月の頃はさらなり。
闇もなほ。
蛍の多く飛び違ひたる、また、ただ一つ二つなどほのかにうち光りて行くも、をかし。
雨など降るもをかし。
秋は、夕暮。
夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて三つ四つ二つ三つなど、 飛び急ぐさへ、あはれなり。
まいて、雁などの列ねたるがいと小さく見ゆるは、いとをかし。
日入り果てて、風の音、虫の音など、はたいふべきにあらず。
冬は、つとめて。
雪の降りたるは、いふべきにもあらず。霜のいと白きも、また、さらでもいと寒きに、火など急ぎ熾して炭もて渡るも、いとつきづきし。
昼になりて、温くゆるびもていけば、炭櫃、火桶の火も白き灰がちになりて、わろし。
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