2014/03/18(火)16:30
紀貫之 人はいさ心も知らずふるさとは
小倉百人一首 三十五
紀貫之(きのつらゆき)
人はいさ心も知らず
ふるさとは花ぞ昔の香かににほひける
古今和歌集 42
人は、さあ、心も分からないが
あなたが住んでいるこの里では
梅の花が昔のままの香りで照り映えているなあ。
註
いさ:否定のニュアンスを持つ古語副詞(感動詞)。さあ。さてどうだろうか。「いざさらば」「いざ鎌倉」などの「いざ」とは別語だが、混同されて「いざ知らず」という語になって残った。
ふるさと:この場合は、現代語でいう「故郷(郷里)」ではなく、昔なじみの(女性が住んでいる)里。
「(花)ぞ・・・(にほひ)ける」は強調の係り結び。
『古今和歌集』編者による名歌。この「花」が梅であることは、作者自らが古今集の詞(ことば)書きで明示している。