2016/09/20(火)18:03
藤原敏行 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
藤原敏行(ふじわらのとしゆき)
秋来ぬと目にはさやかに見えねども
風の音にぞおどろかれぬる
古今和歌集 169
秋が来たと
目にははっきり見えないけれども
風の音にはっと気づかされたなあ。
註
古今調特有の理屈っぽさもやや感じられるが、繊細な感覚と端正な言い回しで秋の訪れを詠った秀歌。
さやか:亮(さや)か。分明。はっきり、くっきりしていること。「爽やか」とは語源的に無関係。
ね:打ち消し・否定の助動詞「ず」の已然形。
おどろく:気づく。目が覚める。はっとする。現代語「驚く」の語源だが、ニュアンスは異なる。
れ:自発の助動詞「る」の連用形。自然とそうなる意味。
「ぞ・・・ぬる」は強意・整調の係り結び。「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形。
「音」と「おどろく」が掛けてあるのかも知れない(当時、濁点表記はなかった)。
秋 鰯雲 煙樹ヶ浜(和歌山県日高郡美浜町)
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