2021/11/20(土)23:23
小野小町 秋の夜も名のみなりけり逢ふといへばことぞともなく明けぬるものを
小野小町(おののこまち)
秋の夜も名のみなりけり
逢ふといへばことぞともなく明けぬるものを
古今和歌集 635
「秋の夜長」というのも、言葉だけのことなのね。
恋しい人と逢っている時には
あっけなく明けてしまうんですもの。
註
プレシャス・タイムはあっという間に過ぎ去る。ひとつの無常観。
名のみなりけり:名目、題目だけなのだなあ。
逢ふといへば:逢う場合には。逢う時ともなれば。
ことぞともなく:「ぞ・・・なく」は係り結び。「ことともなく」(特段の事もなく、あっけなく)を強調した言い回し。
ものを:形式名詞「もの」に、接続助詞とも終助詞とも解し得る「を」がついた連語で、活用語の連体形に接続し、上の句を体言化して、悔恨、愛惜、不満などの気持ちを表わす。このまま現代語でも用いる。cf.)「あの時、ああしておけば良かったものを」。