2024/11/05(火)05:07
藤原彰子 見るままに露ぞこぼるるおくれにし心も知らぬ撫子の花
藤原彰子(ふじわらのあきこ、しょうし)
見るままに露ぞこぼるる
おくれにし心も知らぬ撫子なでしこの花
後拾遺和歌集 569
見ているだけで涙がこぼれるのです。
見ていると、朝露がこぼれる撫子の花を無邪気に摘んで持ってきた、
遺されたことを心にも知らぬ、花のような撫でし子よ。
註
一条天皇の中宮(皇后)だった作者が、崩御によって皇太后となったある日、まだ父の死を知らぬ頑是ないわが子・敦成あつひら親王(のちの後一条天皇)が、撫子の花を摘んできたのを見て詠んだ。
「文学担当」の女房(侍女、女官)だった藤式部(紫式部)の指南も入っているかも知れない。象徴主義的技法を用いている佳品。
* NHK大河ドラマ『光る君へ』10月27日放送。