春の七草の歌 芹なづなごぎやうはこべら仏の座すずなすずしろこれぞ七種
よみ人知らず芹せり 薺なづな 御形ごぎやう 繁縷はこべら 仏の座 菘すずな 清白すずしろ これぞ七種ななくさ註南北朝時代の1360年代に、公家の学者・歌人四辻義成によって著された『河海抄』という源氏物語の注釈書が初出といわれる。秋の七草の歌は万葉集に見え、歌人・山上憶良というれっきとした作者がいるが、こちらは当時の俗謡のたぐいか。くだんの四辻義成作との説もあるが、不詳。いずれにしても、野趣溢れ人口に膾炙した、なかなかの名歌と言えよう。芹せり:セリ科。薺なづな:アブラナ科。通称・小児語 ぺんぺん草。生長すると花茎の塔(とう、あららぎ)が立ち、三味線の撥(ばち)のような果実を付ける。冬から早春の若葉(ロゼット)を食べる。御形ごぎやう:「おぎょう」ともいう。母子草(ハハコグサ)。キク科。繁縷はこべら:ハコベ。ナデシコ科。仏の座:コオニタビラコ(小鬼田平子)。キク科。現在の和名でいうホトケノザとは別種。菘すずな(鈴菜):蕪(かぶら、かぶ)。アブラナ科の根菜。古来、丸っこいものに、神聖感のある「鈴」の名を付けて美称とした。余談だが、「(お)ちんちん」にも似たようなニュアンスがあると思われ、鈴の音の擬音語。古語は「ふぐり(殖栗、睾丸)」。清白すずしろ:大根(アブラナ科)の美称。「蘿蔔」とも書く。