「ロスチャイルド家と最高のワイン」と「西の魔女が死んだ」
旅の間に読んでた2冊の本のこと。ロスチャイルド家と最高のワイン―名門金融一族の権力、富、歴史前半は、ロスチャイルド家の歴史。これがなかなかおもしろい。歴史のある名門かと思うてたけど、初代ロスチャイルドは、18世紀半ばフランクフルトのゲットーに生まれたユダヤ人マイヤー・アムシェルで、古銭商・両替商から始めたそうや。彼の5人の息子がフランクフルト・ロンドン・パリ・ウィーン・ナポリの各支店を担当し、徹底した同族経営、同族結婚、情報ネットワークを武器にのし上がっていく。ユダヤ人として迫害されながらも、ビジネスのためにと社交関係も華やかで、ゲーテ、リスト、パガニーニ、ロッシーニ、ショパンなどとの交流もあり、レンブラント、ルーベンス、フェルメールなどの美術品や宝飾品の収集コレクションもすごかったそうや。ナチスによる迫害で、コレクションを没収されるだけやなく、一族のなかには収容所で殺害された人もおった。慈善活動も欠かさず、パリのルーブル美術館に寄贈された美術品もすごい数にのぼる。そんなロスチャイルド家がなんでワインと関係があるんかと思うたら、ボルドー5大シャトーのうちシャトー・ラフィット・ロートシルトとシャトー・ムートン・ロートシルトは、ロスチャイルド家が所有してる。ロスチャイルドのドイツ語読みが、ロートシルト。後半は、ボルドーワインの歴史でもある。私は、ワインのことほとんど何も知らんのやけど、わかりやすく読めた。13世紀、ボルドーは「イギリスのワイン貯蔵庫」と呼ばれ、クラレットという淡い色の今のとは似ても似つかないもんを作ってたそうや。17世紀、オランダがワイン販売の指導権を握り甘いワインが好まれだすと、ボルドーワインは危機に陥る。でも、品質、個性化、ブランド形成という市場戦略をとってイギリス市場で成功を収める。このころ、ワインはフランスでよりイギリスなどの外国でよく飲まれてたそうや。ロスチャイルド家が葡萄園を手に入れたのは、1853年。初代から3代目になるナサニエル氏が、シャトー・ムートンを購入。1855年パリ万博が開催されるのを機に、ワインの格付けが行なわれたが、そこでムートンは二級とされてしまう。それからランクアップをめざしての戦いが始まる。1973年までムートンのモットーは「われ一級たり得ず、されど二級たることを潔しとせず。われムートンなり」やった。1868年、初代の5男ジェームス氏が、念願のシャトー・ラフィットを手に入れる。2つの隣りあった葡萄園がロスチャイルド家に渡ってから、ラフィットとムートンは敵対関係がさらに濃くなったけど、それがボルドーの質を上げていくことにもつながった。フィロキセア、べト病などのせいで1880年代の10年間フランス全土の葡萄栽培は深刻な被害を受け、栽培面積が3分の1にまで減った。ムートンとボルドーを再度発展させたのは、20歳になったばかりのフィリップ氏。彼は、ロスチャイルド家で初めて、現場で汗水流しながら経営しさまざまな改革をおこなっていった。1927年からの「シャトー元詰め」、「ラベルアート」(ワイン商の反対にあいい、再開されるのは1945年)、「グラン・シャトー」の新築。セカンドラベル「ムートン・カデ」の商品化、ラベルへの収穫データの記載や署名の書き入れなど。フィリップ氏は自動車レースにものめりこみ、ブルゴーニュグランプリでは1位でゴールしてるほか、舞台演出や映画監督などもしてはったそうや。第二次大戦勃発で、ナチスに狙われたロスチャイルド家の人々は逃げ出すが、フィリップ氏はカサブランカで捕まり捕虜にされるなど危機一髪の運命に見舞われる。戦争中ヒトラーやナチス幹部が狙ったのは、ロスチャイルド家の宝物だけやなく、最高級のボルドーワイン。シャトーの人たちは、普通のワインに「ムートン」のラベルを貼ってナチスに届けるなど、最高級ワインを巧妙に隠しておいたそうや。フィリップ氏は、無事シャトー・ムートンに戻れ、終戦の年1945年には最高傑作の「世紀のワイン」が生まれ、ラベルには戦勝記念を表す「V」をかたどったデザインが貼られた。 それを機に、ラベルアートは再開され、ウォーホル、カンディンスキー、キース・へリング、ダリ、ジャン・コクトー、ピカソ、バルテュス、マリー・ローランサン、シャガール、堂本尚郎などのアーティストがデザインしてる。報酬は、ラベルをデザインした年と好きな年のヴィンテージワインを5箱ずつなんやそうや。1962年には、ワインミュージムも設立されてる。1973年、フィリップ氏の粘り強い交渉が実を結び、シャトー・ムートンがプレミエ・クリュ(一等)への昇格を認められる。この年のラベルは「われ一級なり、かつて二級なりき、されどムートンは変らず」と書きなおしたそうや。1976年の「パリ・テイスティング」で、カリフォルニアワインに、フランスのワインが全敗するという事件が起こる。1970年にカリフォルニア、ナパ・ヴァレーのワイナリーを経営するモンダヴィと知り合ったフィリップ氏は、1981年仏米合作のワイン「オーパス・ワン」を商品化、大成功をおさめる。ワインに詳しい人が読みはったら、もっとおもしろいんとちゃうかなあ。それに載ってる写真も興味深い。「シャトー・ラフィットのワインはエレガントで、ときにつんと澄ました感じがする。これに対してシャトー・ムートンはゴージャスで、ほとんど風変わりとも言えるような味わいのワインで、その芳醇さに魅了される。」そうや。いつか、飲んでみたいなあ。楽天で、2つのシャトーのワインを探してみた。 本の表紙の写真に使われてる2本、シャトー・ムートン・ロートシルト1993が39,600円シャトー・ラフィット・ロートシルト1992が51,450 円世紀のワイン シャトー・ムートン・ロートシルト1945が、なんと1,880,000円仏英合作オーパス・ワン 2004は、27,500円ムートン・カデは1090円、これなら楽しめそう。エドモンド男爵のシャトー・ペイル・ルバード 2003が、2,709円アルコールには弱いんやけど、お酒は嫌いやない。ワインをとっても飲みたくなる本やった。もう一冊は、西の魔女が死んだ 映画を観たので、原作も読んでおきたかった。原作に忠実に作られてることがようわかった。でも、やっぱり原作読んでから映画観るほうが好きやなあ。今日のラッキーくじは、ラッキーサーチが5ポイントアタリやった。 人気blogランキングへ ええかなと思わはったら、クリックよろしゅうに!