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自分が唯一無二と思っていた、あるいは自信をもっていたことに対して
そうでなかった事実がわかった時、人はあの感情に立たされる。 そういう文章 を見たことがある。 嫉妬。 「やきもち」のように可愛げもなく、その二文字に女偏が並んで いるのはどうしてだろう? 独占したいと思う気持ちは、二人の間が濃くなれば濃くなるほど比例していく。 そして加奈子にもやっかいなその感情が、すでに許容量を超えた心に入って来ていた。 溢れ出した水槽の水は、元々あった仕事への情熱やわずかな理性や罪悪感 の順に出て行ってしまう。 一時のアバンチュールとして割り切れるなら、スリリングで、自由恋愛と胸を 張って楽しめるのだろうか。 少なくとも加奈子にはそれはできない。 イブにはまだ一月あるというのに、街の表情はときめきと輝きに彩られる。 牧島に誘われ、ホテルのバイキングランチにきていてた。 牧島が使ったそのライターの火が、そのまま加奈子の煙草に点けられる 光景は頻繁にある。 厨房であのパっとしない窓を十センチほど開け 意味もない換気をしながら、ストレス発散のいっぷく。 「お皿、幾つ使ってもいいのにー」 「めんどくさいし」 牧島はそれをじっと見て、半ば感心した面持ちで言った。 一つの皿にシュウマイやら、寿司やら、あげくに一口ケーキまでサラダの横に おさまっている加奈子の皿。 二人は煙草を一本吸うと、それらを食べ始めた。 加奈子はケーキから食べた。 牧島は笑った。 「相変わらずねえ、普通に食べてるんだね?」 来た!と思った。 今日の誘いは緊張があった。 痩せた事を自覚していた 加奈子は牧島の言葉で顔を上げた。 このまま美味しいランチタが終わり 午後の仕事に普段通り取り掛かれますように!と心のどこかで思っていた事が 崩れた。 「・・そんな痩せ方するような恋愛、止めた方が身の為かもー。 なーんて 言ったらどうする?!」 「・・」 牧島らしい言い方だった。 重いことを軽く言う牧島の言葉はあまりに 鋭く、加奈子の胸に突き刺さった。 既婚の女性の直感か、牧島の洞察力か・・・ 深い優しさか。 「彼、いい仕事するし、なかなかの男前だからけっこうモテルんだよね。・・」 牧島は「高倉」という名を口にはしなかった。 そう、最後まで。 続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006/05/09 04:03:31 PM
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