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シーズン 11 海の向こうで 「前略 イギリスの秋は早い。 木々も枯れ気温も日ごと下がる。 潔く、ツヤのある長い髪を切った裕子さんの写真を見て、何かを吹っ切って元気に 前に進んでいるんだと思った。 違う? 嬉しいよ。 俺の方は・・結論から先に言うと、梨絵と別れた。 原因は全て俺にある。 その原因については今はまだ裕子さんに話せる状態ではないので・・・・それから 裕子さんに謝らなければならない。 せっかく俺の為に書いてくれた小説 「夢の中へ」上を俺自身が幕を閉じてしまった事を。 飛行機の中で読んで、仕事の事、仲間の事、俺の家族の事、彼女の事・・・・ それらが詰まった小説をイギリスに持っていける事が嬉しかった。 幕を引き 終わりにしてしまった「夢の中へ」は、俺の大切な宝として大事にする。 改めて言うのも可笑しいけれど、裕子さんの存在は俺にとって「女性」という 全ての意味を含んだ大切な人だという事が、日本を離れてみて実感してる。 母だったり、姉だったり、時に妹だったり(ごめん)、親友だったり・・」 シャワーを浴び髪を拭きながらリビングに戻り、楽しみに開けた雄二の手紙 を読んだ裕子の心は冷えた。 気が抜けたような顔で髪を乾かす自分が鏡に写った。 今まで雄二から届いた手紙やカード、写真、そして新聞の切り抜きを一つ一つ 見ていった。 授業の一環として書いた犯罪防止のポスターがハンプソン州の 警察へ提出され、雄二の作品が2位に入り表彰を受けた時の新聞記事だった。 (AN ANTI-DRUGS POSTER) そしてそれは、州全域に貼られた。 スコットランドの土産として届いた「髪留め」は、髪を切った後はドレッサーの 引き出しの中に大切にしまっていた。 海の向こうで一つの恋が終わった。 何度かペンを取ったが、返事は書けなかった。 続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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