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星の髪飾り

星の髪飾り

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2007/01/10
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 年明けの一月十日、夕方寒風の中を駅に向かう。

車ならきっと、二十分ほどで着くのだろうと思いながら、コートの襟を左手で握りしめて

若者がしゃがみ込むコンビニの前を通り過ぎる。

やがて信号の手前に「街路樹」の看板が見えた。 

街灯に照らされた洋館風の建物は、温かみのある雰囲気を醸し出していて、やみの夜に

ふうっと浮いているように見えた。

 店内に入ると、配置された重厚感のある家具、剥き出しの黒い梁、ステンドグラスの小窓、

レトロな照明器具、それらが寛ぎの空間をつくっていた。

さらに格子の衝立で仕切られたあたりは、「導線にも気を配っているなあ」と頷く。

迅速に店内のポイントを見渡した裕子は、決別したはずの仕事に未練がある事を知る。

認めまいと、慌てて心の引き出しを閉めようとしたが、防虫剤や乾燥剤が邪魔をする。 

そして呟く。

「この情感豊なインテリア、一言でイメージするなら鹿鳴館」

 さらにときめく。

「ああ、ステキ・・・・・・ここで働けるんだ! 」

 そう思うと、銀座のネオンとは違った街並みに肩を落とした事など、どうでもよくなり、

面接が通った「ラッキー」に久々に笑みがこぼれる。

 仕事の説明を受ける為にやってきた「街路樹」。

更衣室で与えられた制服に着替え、他の四人の高校生と「どーも」と挨拶を交わした後、

チーフの西田の指示に従って厨房へ向かった。

西田は少し大きな顔に特徴のある、たぶん流行りの眼鏡をかけていた。

とりあえず裕子が「ん? 」と思う服や小物、装いは「流行り」と言うことで片付ける事に

している。 

 厨房では二人の男の子が、裕子達と同じ白いコックコートを着て立っていた。

ただ、サロン(前掛け)の位置が腰の下。 「俺は先輩だよ」という生意気なポーズ。

キャップも斜めかぶり。 彼等は興味の眼差しで、新米の列を待ち構えていた。

裕子は一番うしろにいた。 前の四人は、同年の先輩に幾分緊張している様子だった。

カウンターと配膳台の間を通り、やっと最後の裕子が中に入った。



「なーんだ、オバサンじゃん! 」

 中の一人が言った。 

「オバサン? 」

 裕子は振り向いた。 歩いてきた導線はいたって単純「オバサン? 」

反射的にオバサンを探す。 誰もいない。 そう、自分しか・・・・・・ 

前もって新メンバーには、女性が一人いると聞いていた彼。 大きな期待ハズレをくらった瞬間、

本来のみこむ言葉をありのまま吐いた。 それは厨房の高い天井にこだました。

空間は微妙にずれた。 揺らぎは世代の差の中で、戸惑いながら何故か微笑む。

「この子の顔は忘れない・・・・・・オバサンをなめるなよ! 」

 これが、大沢竜也との出会いとなった。





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最終更新日  2007/01/10 09:07:15 PM
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