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「あっ、それいいっすねえ! やりましょうよ香川さん!」 「賛成!十代、二十代、三十代、それから裕子さん!」 奏は矢沢の勢いに釣られて弾むように言った。 「どうしてこういう展開になるのかなあ?ドラム、やっぱり必要?」 「ベースとドラムは影、引き立て役。わかるっしょ?」 「花で言うと、かすみ草かあ・・・・・・ナイトの後藤君に頼もうかね」 「駄目だよ!自分のバンド持ってるから、無理言えないし」 竜也がきっぱりそう言うと、千尋もにっこり微笑みながら頷いた。 少しの沈黙の後、裕子はゆっくり顔を上げた。 そして不安げに四人を見た。 「私はね、天からのくじ引きを引いていないのよ。つまり、音楽の才能の当たりくじ」 「そんなもん、誰も引いてないよ! それに裕子さん、度胸も才能のうちじゃん?」 裕子は、強気で喋る竜也に何か言いたいのに言葉が出てこない。 むずがゆい。けれど決断を強いられる今は掻くこともできない。(ああ!寿命が縮まる~) 短期決戦。 メンバーの足を引っぱるようでは申し訳ない。 それでも心臓の底の方から 「やって、やれないことはない!」という気持ちがふつふつと湧いてくる。 「わかった。 私、やる」 裕子がいつもと違って落ち着いた口調で言った。 どっと湧いた歓声の中、裕子は信用金庫の名前が入ったセンスのないカレンダーを見た。 (竜也は私の肩をポン!と叩いて、きっと言う『言い出しっぺだから、やるしかないね』) 「ルールその一。 バンド内恋愛禁止」 「ええっ! それってありー?」 (わかりやすい奴だ) 「何おまえ、何かまずいことあるの?」 矢沢は速やかにふたりの既婚者を削除した。 「ああ!そういうことだったのー?」 奏は突然やってきた視線の束に戸惑いながら、微妙に心の動きを見せた。 「バカね、竜也ったら!」 「急に話し替えて、やっぱ嫌な性格」 裕子は、お台場の夜景にしっくり馴染むふたりを想像した。 それどころではないと思いつつ、スティックを握るもう一人の自分を浮かべては身震いし、 整わない回線に少し焦る。 そして賑わいだテーブルに頬杖をついて、誰を見るともなくただ微笑んでいた。 撮影kitakitune05さん お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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