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星の髪飾り

星の髪飾り

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2007/06/18
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 色気のない俺の部屋に、キュートな花が置かれた。

発色も香りも、まるでアメーバのようにただ広いだけのリビングに静かに静かに浸透する。

もう何かがはじまった。 「俺は自然体でいくよ」 とキュートな花に一度だけ話し掛け、

すまし顔の彼女を思い出す。

 俺が仕事帰り、車から降りて花屋に寄るなんて設定はちゃんちゃら可笑しくて

噴出しそうだった。 たぶんチャンスは二度とない。 その一点で全部の細胞を

ひっくり返したような勢いだったろう。 

「あら! お隣だった、えーっと・・・・・」

 彼女はそう言って俺を見上げた。

(ディスカバー優!)俺はそういう弾んだ心地でいくつかの言葉を交わし、黄色い

ハイビスカスを指差した。

「花言葉はね・・・・」

 彼女は長い睫毛を落とした後、もういちど俺を見てうれしそうに微笑んだ。 具合のいい

小じわがあった。 

「黄色が繊細な美しさ。 この赤いハイビスカスが新しい恋。 何かいいでしょ、花言葉」

 人懐っこいさと、どこかで冷ややかに男を見透かす裏腹の素材が彼女を組み立てている。

俺は益々感心しながらラッピングする後ろ姿に見惚れていた。

夕暮れに俺なりの恥を晒し、訳もなく通りの向こうを見たりしながら長くて短い時間を

持て余す振りをしていた。

プレゼント用と信じた彼女は手馴れた様子でリボンを仕上げ、時々若い店員に言葉をかけ

たり客に愛想よく、張りのある声を送っていた。 「ありがとうございましたー!」

 

 俯き加減がたまらない。 ふり向いた彼女はやっぱり並んだどの花よりも眩しかった。

「お待たせしました」

                      photo by kitakitune07さん





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最終更新日  2007/06/18 09:11:32 AM
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