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星の髪飾り

星の髪飾り

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2007/10/09
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              シーン 6 「決断」
 
 その日大谷家の座敷では、多希子を抱いた長女の幸(さち)と進二夫婦が、冴と静かに話していた。
縁側の窓を数枚開け、吹き込む風で涼を取った。 

「それがこの子の為だでね」
「茂夫さだって直ぐには再婚せん。 どいれ辛くておるで」
 
 令子の亡き後、忘れ形見となった多希子を誰が育てるかという現実が待っていた。
多希子は、ぼんやり見える叔母の顔に口元を歪ませている。                                              「真沙が多希子の母親になるしかないと思う」                
 進二が大きな溜息の後、呟いた。
「他人(継母)にこの子を育てさせるなんてできんでね」
 幸が、ふっくらとした腕の中で眠る多希子を見つめながら言った。 
その時、突然襖が開いた。 白いブラウスの衿の所まで、お下げの髪を垂らした真沙が立っていた。
「義兄の所に嫁ぐなんてできん!」                   
「お、おまえの気持ちも、わからんわけじゃない。ただ・・・」
 幸は澱んだ空気の中、冴に目を移した。 娘の死に目に立ち会えなかった小さい母の姿が痛々しい。                                    
そして幸は進二に同意を求めるように話を続けた。
「母さんが心労で倒れたらどうする? 頼むで真沙!」
「母さんが・・・」 真沙は言葉を失った。 

 その時大きな声に反応したのか、眠っていた多希子が突然泣き出した。 
「この子を守らんと令子が悲しがるに」
「真沙、わしの具合が良くなるまででいいに。 わしは元気になるで!」
 冴の息づかいは、魂から発する息吹に満ち、心に合わないことを突きつけられた真沙を揺さぶった。 

 真沙はしばらく立ったまま俯いていたが、ふいに背を向け、部屋を出て行った。
暑い日差しを溜め込んだ石垣に寄りかかった真沙は、停滞を許されない太陽から言い知れぬ攻撃を浴びた。 
やがてゆっくり空に向かった真沙の瞳は、沈黙を破ったように潤みはじめた。

                            photo by kitakitune07さん


                次回 「永遠に」 第二章 
                               シーン1 「れんげ畑」


 しばし、昭和の懐かしい風景をお楽しみください。
                            ひよこ めぐみ かおと ひよこ





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最終更新日  2007/10/10 05:09:47 PM
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