249253 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

星の髪飾り

星の髪飾り

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2007/10/13
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類

                シーン3 「ご褒美はフラフープ」 1

                                    
 暑い盛りに入った頃、息抜きの機会を得た真沙は、水玉のブラウスを着て長い髪をきれいに整えた。                               
多希子は、おめかしした真沙を見て、自分もお気に入りの靴を履いた。 赤い靴のベルトの部分には、大きなリボン付いる。
「お出かけ、お出かけ!」                    
 はしゃぐ多希子の手を引いて、通りに出てくると、フラフープを回す若者達に出会った。
「あの丸い輪っかをまわすと偉くなる?」
「ならんよ。 目がまわるだけだに」
「れんげの畑には、もう行かんで、あの輪っかが欲しい・・・」
 多希子には、彼等がとても楽しそうに見えた。 真沙は立ち止まる多希子を上手に騙して歩きはじめた。

 自動車が流れる大通りに出ると、大きな宣伝画が付いた映画館が見えてきた。 チケット売り場には行列が出来ており、退屈しのぎに、真沙がハンドバックから甘露飴を出すと、多希子の頬は右に左に膨らんだ。                           

 やがて重い扉を開けて暗闇に入った多希子は、真沙の手をぎゅっと握った。
「映画は暗いの?お化けは出ん?」
「大丈夫だに。 おりこうに出来る?」
「うん、おりこうにするで、ご褒美はあの輪っかだでね」
 多希子が「ご褒美の契約」を済ませると、辺りはもっと暗くなり、ブザーがなった。 
真沙も大勢の人と同じように気持ちと整えた。
多希子の眼差しは時代のヒーローを追った。 刀を抜くお侍、綺麗な着物のお姫様。 けれど多希子の好奇心は次第に衰え、足をフラフラさせながら、退屈を励ました。

 ハンカチで涙を拭く真沙の耳元で、多希子は両手を膨らませて囁いた。
「チャンバラは悲しいでね・・・もう見ん方がいいに」 
 
                      photo by しっぽ2さんさん





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007/10/13 06:41:31 PM
コメント(14) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.