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星の髪飾り

星の髪飾り

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2008/05/29
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 紫陽花の葉の上で雫が光っていた。 

庭の片隅には母が好きだった小さな桜の木がある。 夏を越え、秋の休息を経て、厳しい冬に

耐える。 ほんの一時ふわふわと花びらを揺らし、誇らしげに春の主役を演じる桜が

僕も好きだ。


 靴職人の父は浅草の工場へ、妹の和奏(わかな)は三人分の弁当を拵えて学校へ行った。  

多くを訊かない二人にすまないと思いながら、僕は庭を眺めていた。

 

 梅雨明け間もないある日、置き去りにされたの自転車のサドル拭いているうちに、ふと

街に出たくなった。 心療内科で処方された薬が効いてきたのか、僕はそのまま自転車に跨がり

路地を抜けた。 表通りに出るとペダルを漕ぐ足がとても軽いことに気づいた。

「空がこんなに青い! 」

 僕は感動した。 

風から感じる季節と心地よく調合して、見えなかった「明日」がこの青に溶けている。

 

 そしてこの日、こころの薬箱に新しい風が入り込んだ。

 

                       photo by しば桜さん





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最終更新日  2008/05/30 07:39:28 AM
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