キューピッドとプシケー
ある都の王家に3人の娘がおりました。中でも末娘のプシケー(プシューケー)は女神のような美しさで、都の人々にも知れ渡っているほどでした。そのうちに人々はプシケーに祈りを捧げるようになり、美の女神ヴィーナス(アプロディーテー)の神殿に訪れる人もいなくなってしまいます。怒ったヴィーナスはプシケーの両親に言うことを聞かないと災いをもたらすと呪いの言葉を送り、プシケーをひとり「灰の山」へ旅立たせよと言いつけました。一方、息子のキューピッド(エロース)にはプシケーを身分のふさわしくない者と結婚をさせる役目を言いつけました。両親はプシケーの身の不幸に涙を流しましたが、ヴィーナスの言うとおりにプシケーを旅立たせることにしました。プシケーは何度となく恐ろしい目に遭い、ヴィーナスに難問を突きつけられ困難の連続でしたが、出会う神々にいつも助けられては難を逃れていました。キューピッドは母の言いつけにそむいて自分の胸に矢を射抜いてしまい、妻にするために自分の屋敷にプシケーを招きました。しかしプシケーの前に姿を現すことは出来ず、暗闇の中でふたりは夫婦となり、暗闇の中でだけ出会いました。そのうちにプシケーは姉たちに会いたくなり、夫に頼んで一度だけ屋敷に連れてきてもらうことになりました。さぞ困難な目に遭っていると思っていた姉たちは妹の豪華な生活ぶりを見て妬み、夫はとても恐ろしい野獣か何かに違いない、正体を確かめるべきだとプシケーをそそのかしました。これまで夫を疑うこともなかったプシケーでしたが、姉たちの話が気になって、とうとう眠っているところに灯りを入れて夫の正体を見てしまいました。見てびっくり、そこには美しいキューピッドが眠っていました。野獣だと思っていた謎の夫が美しいキューピッドであったと知ったプシケーは喜びますが、決して姿を見てはいけないという約束を破ったプシケーにキューピッドは信頼を裏切られたと怒ります。しかしふたりはすでに夫婦。キューピッドは他の神々にプシケーを紹介し、母ヴィーナスにも許しを請います。そしてみんなに祝福されて・・・・ハッピーエンド☆キューピッドとプシケーさく: ウォルター・ペーターえ: エロール・ル・カインやく: 柴鉄也ほるぷ出版 1990年Wikipedia<プシューケー>(今年の企画「絵本百冊読書」のNo.95で登場) ギリシャ神話の一説。神と人間の娘の恋の物語であるが、ヴィーナスの怒りや呪いで話は複雑な展開へ。またプシケーの美貌に妬む姉たちが加わり、さらに泥沼化され昼メロの如くややこしいことになっていた。なのに最後はあっさりとハッピーエンド、そこがまたいい。白黒のエロール・ル・カインのイラストが素晴らしい絵本。タロットカードの挿絵のような雰囲気で神秘的かつ幻想的。芸術的。蔵書として持っていたいと思う、ハイセンスな一冊だった。