イランの山

イランの山 11月29日(金)

イスラム圏では金曜日が休日です。皆さんご存知ですネ。
ある冬の晴れた金曜日、友人が「マウンテン・サイドに行こう」と言うのです。「素晴らしいから」とネ。

私はこの「素晴らしいから」の一言に浮き立ち、連れて行ってもらうことにしました。

車でエルブルス山脈の麓まで、快適なドライブです。
車から降りると既に、テヘランの町がある程度見渡せる程で、風もなく、一段と期待に胸が膨らむのでした。
ここから少し歩いたところにロープウェイがあり、それで一気に山頂付近に行くと「絶景だ」と嬉しいことを言ってくれます。

イランの山は禿山です。木が一本もありません。そこに雪が積もったりして・・・。眼下にはテヘランの町並みってな調子です。

ところがです!!。。。
歩き始めたとたんのことです。息が切れ足が思うように前に進まないのです。
何としたことか。ハアハア、ゼイゼイ。
「時差による寝不足のせいか? はたまた、日頃の運動不足のせい?」ふぅーッ!

たちどころに、友人のイラン人には置いて行かれ、彼らは「早く来いよ」とばかりに立ち止まって私を振り返っています。

「エェーイ!このままでは日本男児のなおれ。イラン人ごときに負けてなるものか!!」ハアハア、ゼイゼイ・・・・・。

そうなんですネ。イランは太古の昔、海底が隆起して出来た高原です。テヘランの平均海抜はなんと、1500メートルもあるらしいのです。従って、私はおよそ、海抜2000メートル付近を登っていたのです。空気は~薄く~、フゥーッ、気ッ圧は~低いッ、はぁ~・・・・。と言うことなんですネ。お解りでしょうか。

誰ですかッ!?「年のせいじゃないの?!」なんて言ってたのは!

やっとのことで、ロープウェイにたどり着きました。
「ウゥ~暑い!もう死ぬかと思った」などと少々オーバーに、それでも元気にロープウェイの順番を待つのでした。

待つこと約1時間、若干の苛立ちと身体の冷えを感じながらも、イラン人達の嬉々とした表情と、誰彼となく人懐っこく話しかけてくることにまぎらわされつつ、一気に山頂へ駆け上がるのでした。

ん?あれ?肝心の景色はと言うと、煙って見えない!!
しかも、キエェーッ!!何だこの寒さはぁーっ!!
未知の世界との遭遇だったんですよ。

それでも、友人に「美味しいレストランがある」などと我輩の弱点をつかれ、気を取り直してレストランへと急ぐのでありました。

レストランはと言うと、なるほど暖かい。しばしは喜んだのですネ。
それもつかの間、運ばれて来た料理は美味しいなんていえる代物ではありませんでした。無理して食った、でも残した、と言う類です。

私は、友人の甘い言葉に惑わされたことを悔やみつつ、下山の途につくのでした。
でもそこからが、本当の試練だったのですヨ。これが。

三々五々登って来た登山客も、降りるときには何故か混み合っておりました。2時間待ちです。例の未知の寒さの中で。
ガチガチガチガチ。余りにも寒いので、駆け足宜しく身体を動かす。すると、空気が薄くハアハア、ゼイゼイ。しんどいので休む。またもやガチガチ、ガタガタ。

皆さん、くれぐれもご注意下さい。冬にはイランの山に軽々しく行かないように!!

冬になるとかのイラン人、「山に行こう」とニヤリとするのです。

皆さん、冬の間だけお願いです。私に山のことを思い出させないで下さい!





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