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テーマ:洋楽(3557)
カテゴリ:音楽
![]() SuedeはやっぱりDog Man Starだ、Coming Upだ、いやAutofictionだろう。 様々な声があると思います。私とて、やはり最強はComing Upだと思っています。 しかし。 Suedeの待望のニューアルバム「Antidepressants」。彼らの10枚目のアルバムとなります。 聴いた瞬間、「冗談ではない」と思いました。 なんなんだこれは。 聴き進めるうちに、さらにその思いは膨らみました。 なんなんだ、とんでもないぞ。 とてつもなく、素晴らしい! 兄さんが「自分たちのポスト・パンク・レコード」と言うように、Autofictionが「パンク・レコード」であることのアンサーなのでしょうか。そのサウンドは闇や影、毒をまとい、圧倒的に不安定でありながら、弾け飛びそうな力をはらんでいます。 かといってそれがとっつきにくいわけでは決してありません。 ニールがインタビューで答えていたのが印象的ですが、ストリーミングが主流になっていく中で、冒頭の十数秒が勝負なのだと。それがつまらなかったら聴いてすらもらえない世の中だね、みたいなことを言っていました。 もちろん、彼らがそうした潮流に迎合しきったとは思いませんが、それを意識しつつのアプローチもあったのかなと思いました。 さて、内容ですが、39分という比較的短い尺の中に詰め込まれたすべての曲がストンと耳に馴染み、残り続けるメロディを持っているという点で、異常です。 先行で発表された「Disintegrate」、「Trans State」、「Dancing with the Europeans」、「Criminal Ways」はまさにそれ。Disintegrateは崩壊と破滅をこの上なくパンクでメロディアスに歌い上げ、Trans StateはまるでJoy DivisionやNew Orderを彷彿とさせるビートで私を脳内で踊らせ、ドキャッチーであるのにまさにブレ兄節のシニカルさが炸裂したDancing~は「くうぅ~!」と私に拳を握りしめさせ、MOJO付録CDで先に聴けたCriminal Waysでは弾むリズム隊とリチのいつになく攻撃的なギターのカッコよさに卒倒しそうになり。笑 そうそう、印象がガラリと変わったのは一番先にライヴで披露されていた「Antidepressants」。ライヴということもあってか、なかなかピンとこなかったんですが、アルバムで改めて聴いてみるとこのパンクスな感じがたまらんのです。最近多くなった兄さんの投げ遣りシンギングがはまる。「抗鬱剤飲んで歌うたってハッピー」という詞はぶっ壊れすぎててもはや心酔します。 これだけではなくて、アルバム収録の曲は本当にどれもが珠玉です。相変わらず息子ラブの兄さんが、ちょっとヒネつつも深い愛情に満ちた詞をつけた「Sweet Kid」は明るいSuede。いや、こう表現する以外思いつかないです(苦笑)。シングルカットしても全然他にひけを取らないキャッチーさと兄さんの詞で泣けます。 全曲感想言ってると永遠に終わらないので端折りますが、兄さんがこのアルバムについてよく言ってる「Broken Music for Broken People」、これがそのまんまアルバムの中に曲として入っているのだけれど、タイトルからは想像もつかないほどとっつきやすさ満点のロックチューンなのです。サビ大合唱が目に見えます。キラキラしてるギターが眩しいくらいだけれど、歌詞は↑ですからね。そこがSuede。 個人的にSuede史上屈指のバラードになると思っているのが、「June Rain」。 歌詞も読まずに聴いた一回目で、私は涙ぐみました。 あまりにも優しく切なく響くメロディと、孤独でいまにも壊れそうなフレーズが、受け止めきれないほどに心を震わせたのです。 「In the June rain I'll hang myself out to dry, In the June rain God only knows it’s hard to say goodbye, I'll love you till July」ってどれだけ泣かせにかかってきたんだ兄さん…! 何度聴いても胸が苦しくなるほどだけれど、素晴らしいバラードだと思います。 Antidepressants=抗鬱剤というタイトルの通り、鬱に陥ったときのどうしようもない暗さ、地の底を這い回るような絶望をにじませているのに、抗鬱剤が効いて躁になりかけたときのように妙なテンションもしっかりと保たれている。こうした不安定なバランスこそがSuedeの本質であり、彼らのサウンドの醍醐味だと私は信じて止まないのですが、それを従来のSuedeファンだけでなく、ちょっとSuede知ってるけど…みたいなリスナーにも確実に届くような音に作り上げたことが、今回のすごさだと思っています。 最近はブリットポップ界隈のバンドが非常に元気ですが、その中でも彼らは後ろに下がらない。常にSuedeらしさをアップデートし、それでいて過去のサウンドの雰囲気を消し去ることはなく(a new morningは別だけど・笑)、決して停滞しない。その心意気を感じたアルバムです。 控えめに言って、最高です。 どうぞ、Suedeにちょっと興味を持ってくれた皆さんも聴いてみてください。 しかし、国内盤はタイトルからトラックから日本語タイトルついてるんですが、ボートラの「薬」はちょっとね(笑)。なんかどうにかならなかったの? ちなみに、UKデラックス盤のボートラ3曲も素晴らしい出来なので、こちらも強くおすすめしたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2025.09.09 19:33:12
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