輝きのそばにある影も含めて
輸入盤 VACCINES / PICK-UP FULL OF PINK CARNATIONS [CD]今年の1月にリリースされたThe Vaccinesの6thアルバム「Pick-Up Full of Pink Carnations」。Vaccinesといえば、たしか私は1stを買ったはずです。けっこう気に入ったはずなのですが…行方不明。そして、何となく音楽から遠ざかっている間に、すっかり彼らのことを記憶の彼方に追いやっていました。が。先日、Drownersの音楽に行き当たった際、VoのMatthew Hittが今なにしてるのかなと思ってググってみたら、彼がVaccinesのサポートをしているという事実を知ったわけですね。そこで、じゃあいまVaccniesはどんな音を鳴らしているのかなと聞いてみたら、ナニコレめっちゃいいじゃないですか。そして久々に手にした彼らのアルバムが、この一枚なのです。1stの感想に「ぼわっとしたとこがいい」とかなんとか書いていたようなのですが、その印象は変わらず。なんというか、浮遊感と高揚感と多幸感が混じり合った、不思議なサウンドに聞こえるのです。メロは強烈にキャッチーでポップ。だけど、VoのJustin Youngの声が、絶妙な低さとハスキーさとセクシーさで、サウンドを見事にロックに塗り変えている。そんな印象を持ちました。本当に、この1枚はどの曲もキャッチーで耳に残るんです。1曲目の「Sometimes, I Swear」なんて一発でサビを覚えるくらいのインパクト。核となるのは「Heartbreak Kid」なのかな。明るい曲調なのに詞はなんとも含蓄がある(ように思える)。タイトルだけ見たらまんま「失恋したの?」とか思いますが、読んでみるとそれだけじゃない。と思ったら、アルバムの曲ほとんど全部が、言葉の裏を推測したくなる、実に意味深な歌詞なんじゃないかと思ったりもしました。まだまだ勉強が必要です、私。「Discount De Kooning (Last One Standing)」や「Sunkissed」も頭の中でずっとぐるぐると回り続けるくらいにキラー・チューンです。Sunkissedの歌詞がなんだかもう好き。甘くて。今回初めて彼らの歌詞を活字で目にすることができて、バンド全体への見方はかなり変わりました。彼らの音は、キラキラとした光の粒子に包まれながらも、それが消え去る瞬間の影もまとっている、カッコいいロックチューン。何といっていいかわからないけれど、すごく楽しい時間とそれが終わる瞬間を同時に感じさせれくれる、そんな感じ。それを支えるのが、時にほろ苦く、くらくらするほど甘く、かと思えば突き刺さるような言葉たち。たまりません。これは困った、過去のアルバムも全部チェックしないといかん。