カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
アメリカの文豪アーネスト・ヘミングウェイが
自らの体験に基づいて書いた傑作を、自らキャスティングして 1943年に製作された大作映画 For Whom The Bell Tolls 「誰がために鐘は鳴る」‥‥ ゲイリー・クーパー、イングリッド・バーグマン‥‥ ハリウッドの2大スターの豪華共演です! 1937年のスペイン。クーデターで政権を握ったフランコの軍事独裁に、 多くの人々が反発して戦い、国土は血で血を洗う内乱状態に陥っていた。 諸外国からも義勇軍が、ファシズム打倒をめざす人々の応援に駆けつけ、 大学でスペイン語教師をしていたアメリカ人・ロバート(ゲイリー・クーパー)も、義勇兵の一人だった。 ある日ロバートが、スペイン北部の山間の鉄橋を爆破する任務のため、 砦のようなけわしい岩ばかりの現地へと赴くと、 反政府ゲリラの荒くれ男たちの群れの中に、美しいが、男のような身なりで、 輝くばかりのブロンドの髪が不自然に短い娘・マリア(イングリッド・バーグマン)を見た。 ロバートの目にマリアは、荒涼とした岩場に咲く一輪の花のように映ったが、 マリアは、とてつもなく重い過去を背負った娘だったのだ‥‥ 両親を目の前でフランコの兵士たちに惨殺され、 頭を丸坊主にされた上に、レイプされたマリア‥‥ ロバートとゲリラの砦で出会った時、少し伸びた髪をつまみながら、硬い表情で、 「ここにいる間、これだけ伸びたの」と、つぶやくのが、ぐっときます。 身体を汚されても、キスの仕方は知らず、ロバートに恋をして、キスをする時、 「鼻は邪魔にならないの?」と、おずおずと訊き、 実際に彼と唇を重ねたあと、安堵したように、 「邪魔にならなかったのね‥‥」というセリフが、たまりません‥‥! 鉄橋爆破の時や、軍隊の攻撃が迫り、明日をも知れぬ命のロバートとマリア。 だからこそ、2人の恋は激しく燃え上がるのです。 苦しげに過去を語るマリアを遮り、「君は誰にも汚されていない」と言うロバート‥‥ 2人が愛を囁く、ごつごつした荒涼たる岩場が、一瞬花園のように見えました。 この作品、ラブ・ストーリーとしても上質ですが、 ファシズムに抵抗するゲリラたちの人間模様を描いた、上質な社会派作品でもあります。 かつては勇敢な闘士だったけれど、今では酒に溺れるゲリラの頭目パブロ、 そんな夫を叱咤し、実質上のボスを務める妻のピラー、 罠で獣を捕まえるのが趣味で、大ぼら吹きだが憎めない闘士プリミティボなど‥‥ それぞれに個性豊かで、実に人間臭い。 中でも、口は悪いけど、男勝りで頭が切れ、闘士たちのリーダー、マリアの母親役まで務めるピラーは、 脇役の中で際立って光っていました。 終盤の戦闘シーン、特にロバートが鉄橋を爆破するシーンは、迫力満点でしたね。 また音楽が、ラブシーン、戦闘シーンなどで、非常に効果的に使われていました。 まるで音楽が、つかの間の恋に落ちるロバートとマリアの心情を語り、 戦乱の恐怖に怯えて叫んでいるような感じがしました‥‥ 昔の名作映画はほんっと、音楽の使い方が上手ですね。 ゲイリー・クーパーは、無声映画時代から俳優として出演していて、 トーキー時代を迎え、多くの映画俳優が、声の悪さ、セリフの稚拙さ、 中には英語がうまく話せないということで、スターの座からすべり落ちたのに対し、 彼は持ち前の演技力で、トーキー時代をうまく乗り切り、その後、押しも押されぬ大スターとなりました。 でも、60歳での死去は、ちょっと早かったですね‥‥残念です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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