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Jul 3, 2007
カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評
無学なれど天才棋士の名をほしいままにし
今でも大阪のヒーローと言われている坂田三吉‥‥ そんな三吉の物語「王将」は、何度も映画化、テレビドラマ化され、 村田英雄や大和さくらの歌にも歌われました。 きょうとりあげる作品は、昭和23年に伊藤大輔監督がメガホンをとり、 阪妻こと阪東妻三郎が三吉を熱演した大映作品「王将」です！ 明治39年、大阪天王寺近くの貧乏長屋に住む藁草履職人・坂田三吉（阪東妻三郎）は、 字は読めないが、無類の将棋好きの上、めっぽう強かった。 将棋狂いで家業はおろそかになり、大会参加の費用を工面するため、 家具どころか仏壇、娘・玉江の晴れ着まで質入し、 我慢に我慢を重ねてきた妻・小春（水戸光子）も、 ついに堪忍袋の尾が切れ、玉江の手を引いて列車に飛び込もうとした。 しかし小春は、三吉の将棋狂いは止まらないだろうと悟り、彼に言うのだ。 「将棋指すからには、日本一の将棋指しになってほしい！」 今までさんざん妻子を泣かせてきた三吉は、この妻の言葉で一念発起、 プロの棋士をめざし、大正２年４月、ついに東京の関根八段（滝沢修）と対戦し、 苦戦の末、なんとか打ち負かすのだったが‥‥ 明治の大阪の貧乏長屋の風景や、三吉をはじめとする長屋の人々の暮らしぶりが モノクロの映像ゆえか、大変リアルに描かれています。 生活保護などの福祉政策もなかった時代ですが、それでも貧しい人々は 肩を寄せ合って、なんとかその日その日を生きてきたんですね。 現在ではほとんど見られない光景でしょう。 長屋の向こうに聳える通天閣がまた、哀愁を誘います。 日本映画の父・牧野省三に映画俳優としての素質を見出され、 '25年の「雄呂血」で、その名を海外にも知られ、 押しも押されぬ銀幕のスターとなり、 トーキー時代を迎え、聞き取りにくい細い声が災いし、一時期人気が低迷したものの、 大声でセリフを言う練習を重ね、見事にスターの座に返り咲いた阪妻‥‥ 「無法松の一生」('43年）、「破れ太鼓」('49年）でも、無学で少々無頼な男を演じていますが、 この「王将」でも、無学文盲の破天荒な天才棋士を見事に熱演しています。 実際の坂田三吉は、映画に描かれているような無頼漢ではなく、 大変礼儀正しく、腰の低い人だったそうですが、 無学ゆえの奇行や天然ボケ発言には、事欠かなかったそうですね。 小春役の水戸光子は、「ダメ夫に尽くす妻」をステレオタイプに演じていて、 ちょっと鼻につくところがないわけでもなかったのですが、 明治の女性のシンの強さは、ひしひしと感じましたね。 玉江役の三條美紀も、勝気な娘を好演していました。 関根八段に追いつめられた三吉が、 苦し紛れのヤマカンの手を使って、何とか逃げ切り勝ちしたあとのセリフ、忘れられませんね。 「お父ちゃんは勝負には勝ったけど、将棋には勝ってないわ！これじゃ関根はんには勝てん！」 最初は激昂する三吉も、娘の一言が胸にぐっときて、自分はまだ棋士としては一流ではないと悟るのです‥‥ 夫婦愛、家族愛のドラマも盛り込みながら 人間としての誇りについての問いかけもしている名作です。    お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
Last updated
Jul 3, 2007 06:13:35 PM
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