カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
きょうは数あるロマン・ポランスキー作品の中で、モイラが最も好きな一作をとりあげます。
'65年、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の「反撥」です。 [DVDソフト] ポランスキー スペシャルDVDコレクション 「水の中のナイフ」「反撥」「袋小路」 都会の古いアパートの一室に姉と二人暮らしの美容師・キャロル(ドヌーブ)は、内気な上にひどい潔癖症で、 恋人はいるが、キスのあとも口をゆすぐようなありさま。 おまけに姉がたびたび恋人を連れ込むのが、いやでたまらない。 ある日、姉が恋人と旅行に出て、キャロルはアパートに一人きりに。 夜、彼女は、男に犯される夢を見た。 その夜以来、彼女の目には、部屋の壁のひびがやけに大きく見えたり、 壁がボコボコと盛り上がって見えたり‥‥ そして‥‥精神に変調を来たした彼女は、恐るべき惨劇を繰り広げるのだった! 古いアパートならどこにでもありそうな壁の小さなひび、 日がたって芽が出てしまう冷蔵庫のじゃがいも、 また、美容院での女性客の爪の手入れといった地味な作業を、 ヒロインの極めて不安定な精神状態の描写に、うまく使っています。 ドヌーブが部屋の灯りのスイッチを入れるや、壁に大きく斜めのひびがバリッと入るシーンは、 非常にショッキングで、背筋が思わず凍りました。 暗い部屋の中、ヒロインの主観で、壁がボコボコと盛り上がるシーンにもゾーッ‥‥! 心理描写でじわじわと観客を怖がらせ、ここぞという時に恐怖のパンチを入れる‥‥ のちの「ローズマリーの赤ちゃん」でも使われている手法、恐るべし、ポランスキーです。 ヒロインが次第に狂気の坩堝に堕ちていく謎を解く鍵は、子どものころの家族写真。 あれはいったいなんなのか? なぜ彼女だけ、他の家族とまったく違う表情をしているのか? とにかく恐ろしい映画でした。 何せ、ドヌーヴが職場でお客の爪の手入れをしているだけで、背筋がぞくぞくするんですから‥‥ モノクロの映像がまた、観る側の恐怖をかき立てているんですよね。 イギリス映画だから、ドヌーヴのセリフは全部英語だけど、彼女の英語、かなり訛ってます。 でも、まあしょうがないですね。アーノルド・シュワルツェネッガーだって、初期の作品のセリフは、英語なんだかドイツ語なんだかわからないほどですから。 しかしまあ、ポランスキーという監督は器用ですね。 「水の中のナイフ」のような凝縮した人間ドラマを演出したかと思うと、 本作や「ローズマリーの赤ちゃん」のような心理ホラーを描いたり、 「戦場のピアニスト」のような大掛かりな感動ものを作ったり。 奥さんがおぞましい殺され方したり、強姦罪で起訴されたりと、 ものすご~く濃い人生を歩いてきた、その賜物なのかしらん。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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